研究課題/領域番号 |
15K11669
|
研究機関 | 香川県立保健医療大学 |
研究代表者 |
榮 玲子 香川県立保健医療大学, 保健医療学部, 教授 (80235134)
|
研究分担者 |
植村 裕子 香川県立保健医療大学, 保健医療学部, 助教 (50353149)
松村 惠子 香川県立保健医療大学, 保健医療学部, 教授 (30310254)
塩田 敦子 香川県立保健医療大学, 保健医療学部, 教授 (90221291)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 育児適応 / 縦断的研究 / 母親の精神状態 / 子どもに対する愛着 / 子どもの行動特徴 / 母子関係 / ストレス対処能力 |
研究実績の概要 |
平成27年度に開始した縦断的な質問紙調査と母子観察および対象へのインタビュー調査を継続し、研究分担者や研究フィールドである産婦人科医院および助産院の2施設への進捗状況の報告と意見交換、データ分析結果について検討した。 データ収集は妊娠末期から産後6か月までの5時期の調査が終了し、現在、産後9か月と12か月の調査継続中である。対象は、妊娠末期231名に依頼し、妊娠末期220名から協力を得た。その後の継続調査対象は、産後5日目前後の産褥早期164名、産後1か月115名、3か月100名、6か月87名となっている。なお、産後1か月調査は、1か月健診時に対面調査を実施したが、3か月からは対面調査希望がなく、郵送法によりデータ収集している。 産後1か月まで継続的に調査協力を得た母親115名の育児適応に関する要因を妊娠末期と産褥早期および産後1か月における変数から検討した。妊娠末期と産褥早期に抑うつ傾向にある母親がそれぞれ20.0%、9.6%で、産褥早期にマタニティブルーズの予測される母親が8.7%いた。産後1か月では23.5%がうつ傾向を示し、妊娠末期から継続してうつ傾向にあった母親が8.7%いた。うつ傾向にある母親の特徴として、ストレス対処能力(SOC)得点や子どもへの愛着得点が低く、産後1か月の不安感が強い状況やよく眠れない等の睡眠状況が示された。また、母親と看護者が捉えている子どもの行動特徴にも違いがみられ、母子関係に課題があることも考えられた。これらの結果を踏まえ、現在、インタビュー内容や産後の母子観察との関連を分析し、母親の育児適応に関する要因を検討している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度の研究実施計画は概ね達成できている。 本研究は、質問紙調査だけでなく、母子観察およびインタビュー調査による縦断的調査研究であり、研究参加への同意後の撤回を考慮して進めてきた。第1回調査の妊娠末期における対象は200名を予定し220名の協力を得た。産後5日目前後の産褥早期では150名を目標としていたが、164名(回収率74.5%)と回収率はやや減少したものの当初目標を達成し、その後も回収率の減少は認められるが、産後1か月115名、産後3か月100名、産後6か月87名から協力を得ている。 現在、産後6か月までの5時期における尺度得点と各期の特徴および産後1か月までの母子観察とインタビュー内容を分析し、育児適応に関する要因を検討している。
|
今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、産後12か月までの縦断的な継続調査を完了し、データ分析と学会発表および最終報告書を作成する。この間、研究分担者や研究フィールドである産婦人科医院と助産院との意見交換やデータ分析結果に関する検討を行う。妊娠末期から産後12か月までの7時期における特徴や各変数の関連および母子観察とインタビュー内容の分析により、妊娠末期から産後12か月までの継時的な経過における母親の育児適応に影響する要因を検討する。特に、母親となった女性が子どもとの関係を築きながら、育児に伴う新たな生活に適応していく重要な時期である妊娠末期から産後1か月における育児適応に影響する要因を探索し、母子・親子関係を考慮した育児適応に向けた支援を検討する。 また、最終報告に向けた検討のため、国際学会に参加し、母親のメンタルヘルスと母子関係に関連した研究動向についての最新情報の収集と海外研究者との意見交換により研究への示唆を得る。
|
次年度使用額が生じた理由 |
人件費・謝金のうち、データ入力・分析等の資料整理に対する謝金を計画していたが、研究代表者が調査票の回収と同時に随時データ入力しているため使用していない。また、平成27年度未使用の物品費と海外研修のための旅費を充当していたが、一部物品購入と国内研修に使用したのみとなっている。
|
次年度使用額の使用計画 |
継続調査の協力を得ている産後9か月と12か月の対象への郵送法による縦断的調査を実施する。したがって、調査通信費(往復通信費)、継続的な調査協力への謝品、2施設での意見交換・報告のための旅費および会議費、未購入である備品購入のための物品費が必要である。また、平成29年度は研究完了年であり、学会での成果発表のための国内旅費、母親のメンタルヘルスと母子関係等の母親の育児適応に関連した研究動向の情報収集と海外研究者との意見交換により研究への示唆を得るための国際学会参加に対する海外研修の旅費を予定している。 平成29年度所要見込額2,600,000円の内訳は、物品費900,000円、旅費1,300,000円、人件費・謝金150,000円、その他250,000円とした。なお、当初の29年度直接経費内訳は、物品費0円、旅費1,000,000円であったが、平成27年度未使用分を物品費および旅費に充当した。
|