本研究の目的は、授乳経験のある更年期女性の糖・脂質代謝亢進予防のために大豆イソフラボン活性代謝物(エクオール)サプリメント摂取の効果を検証することである。また授乳期女性のエクオール産生能や脂質代謝を調査し、授乳期と更年期の脂質代謝状態との関連を推察する。これまで有病者以外の中高年女性の糖・脂質代謝へのエクオールの効果は検証されておらず、予防的な摂取を促進する一助となることが期待される。 平成30年度は、昨年度に本学研究倫理・安全委員会の承認を受けた授乳期女性の調査を実施した。正常経過で、母乳育児を希望する妊娠36週以降の妊婦をリクルートした。出産までに、尿中エクオールを調査し、産後1か月と3~4か月時に、血中脂質、HbA1c、血中骨代謝マーカー等を測定した。また、年齢、出産回数、授乳の状態、更年期類似症状と食物摂取頻度調査票(FFQ)も実施した。平成31年3月に第33回日本助産学会で結果の一部を報告した。エクオール産生者は対象者10名のうち4名(40.0%)であった。TCは1か月時に基準値を超えており、3~4か月には有意に低下(p=0.005)し、LDL-Cも1か月時に基準値上限であるが、3~4か月には有意に低下していた(p=0.005)。TGは基準値内であるが、1か月より3~4か月は有意に低下していた(p=0.038)。P1NPは1か月から3~4か月には有意に上昇しており(p=0.005)、NTXも3~4か月で有意に上昇し基準値を超えていた(p=0.007)。1か月時のTCやLDL-Cが基準値より高値なのは、分娩直後のエストラジオール低下により代償的に上昇したと考えられ、3~4か月時の低下は、母乳育児による脂質消費の促進によるのではないかと推察される。骨代謝マーカーは、エストラジオールの低下と授乳により骨吸収・骨形成の骨代謝回転が促進されているためと考えられる。
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