研究課題/領域番号 |
15K11676
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研究機関 | 日本赤十字秋田看護大学 |
研究代表者 |
阿部 範子 日本赤十字秋田看護大学, 看護学部看護学科, 講師 (90442011)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 遠位-近位部温度勾配 / DPG / 乳児 / 睡眠 / 概日リズム / 寝つき / 体温 |
研究実績の概要 |
本研究は末梢皮膚温度の上昇に伴う遠位-近位部温度勾配(以下「DPG」)をコントロールし緩慢上昇を誘発することにより、乳児の概日リズムの発達を促すことを検証することが目的である。28年度は27年度同様に調査を行い、生後4ヵ月の乳児を対象としてDPG緩慢上昇の誘発方法を確定することが目的である。同時にDPG緩慢上昇と睡眠の質との関連、日中の外出時間と睡眠の質との関連について評価を行った。調査は4日間とした。Logger Tempureture LT-8 Series LT-8Aを装着しDPGを測定した。同時にアクチグラフ装着を装着し、pslp(総睡眠時間の割合)、lslp(浅睡眠時間)、lsep(5分以上の覚醒回数)、msep(1回の平均睡眠時間)、lgsep(最長睡眠時間)、mwep(1回の平均覚醒時間)、lgwep(最長の1回覚醒時間)(以下「睡眠の質」)を調査した。 DPG緩慢上昇の誘発方法を検討するために、1日目と3日目は入浴後に靴下を履かせてもらい遠位部の保温を行った。また、入浴時間を消灯2時間前と3時間前を目安とし、4日間同じ時間にならないように調整してもらった。 DPG緩慢上昇を誘発する育児要因として有意な関連は認められなかったものの、入浴~消灯時間(p=0.181)、平均気温(p=0.149)でP値が0.2を下回り、DPGとの関連が示唆された。一方、緩慢上昇率は靴下を履いた1日目(18.2%)・3日目(20.0%)が高く、2日目(11.1%)・4日目(0%)が低く、有意差が認められた。 DPGと睡眠の質との関係を比較した結果、pslpに有意な関係が認められ(p=0.045)緩慢上昇群が高かった。また、日中の外出時間と睡眠の質との関連を比較したところ、pslp(r=0.004)、lsep(r=0.001)、msep(r=0.001)との間に相関関係が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
育児要因とDPG緩慢上昇に有意な関連は認められなかったが、緩慢上昇率は靴下を着用した日の方が着用していない日より高かった。またDPG緩慢上昇と、入浴~消灯時間・平均室温との関連も示唆され、入浴~消灯時間は短いほど、平均気温は低いほど、緩慢上昇率は上昇する傾向にあった。調査は夏季と冬季に実施したが、室温調整がなされているため、季節による室温の違いは見られなかった。また、室温は4日間の調査の間大きな変動はなく家庭毎に一定であると考えられ、DPG緩慢上昇誘発のための室温調整は適当ではないと考えられる。よって緩慢上昇率を高められる可能性がある育児要因は、靴下の着用と入浴~消灯時間の短縮である。 DPG緩慢上昇によるplspの上昇が確認され、さらにlgsep、mwep、lgwepとの関連が示唆された。27年度研究と合わせてDPG緩慢上昇が睡眠に与える影響が改めて確認された。
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今後の研究の推進方策 |
29年度はDPG緩慢上昇率を高められる可能性がある育児要因として、「靴下の着用」と「入浴~消灯時間の短縮」を試行していく。 概日リズムが形成されていない(入眠潜時が30分以上、夜間2回以上の覚醒、夜泣きがある)乳児、さらに母親が児の睡眠状態を改善したいと考えている者を対象とする。母親の申請により調査を実施するが、始めに “通常の生活におけるDPG変化” と睡眠の質を計測する。次に「靴下の着用」と「入浴~消灯時間の短縮」を行いDPG変化 と睡眠の質を計測し比較する。「靴下の着用」は28年度研究同様入浴15分後、「入浴~消灯時間の短縮」は28年度研究で緩慢上昇が見られた乳児の平均値90分とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
学会発表を含み国内旅費に関し、近隣での実施が可能であったため次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
ほぼ当初計画通りに使用する。
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