DPG緩慢上昇率を高められる可能性がある育児要因としてこれまでの調査で得られた「靴下の着用」と「入浴~消灯時間の短縮」を試行し、DPG緩慢上昇、睡眠の質との関係を検討した。 概日リズムが形成されていない(入眠潜時が30分以上、夜間2回以上の覚醒、夜泣きがある)乳児、さらに母親が児の睡眠状態を改善したいと考えている者を対象とした。始めに“通常の生活におけるDPG変化”と睡眠の質を計測し、次に「靴下の着用」と「入浴~消灯時間の短縮」を行いDPG変化 と睡眠の質を計測し比較した。「靴下の着用」は28年度研究同様入浴15分後、「入浴~消灯時間の短縮」は28年度研究で緩慢上昇が見られた乳児の平均値90分とした。靴下着用時と非着用時、入浴から消灯までの時間短縮時と非短縮時のDPG緩慢上昇度、睡眠関連指標(pslp、lslp、lsep、msep、lgsep、mwep、lgwep、actx)、入浴~消灯までの時間、入浴時間、お風呂の温度、消灯前ルクス、消灯後ルクスの基本統計量を比較した。混合モデルの結果、mwep(1回の平均覚醒時間)は靴下着用との間に有意な関係が認められ(p=0.04)、着用時が非着用時より短かった。またお風呂の温度と有意な関係が認められ(p=0.04)、温度が高いほどmwepは長かった。また、lgwep(最長の1回覚醒時間)は風呂の温度との間に有意な関係が認められ(p=0.02)、お風呂の温度が高いほどlgwepは長かった。DPG緩慢上昇率の向上が期待されたが、今回の実験では靴下着用時のDPG緩慢上昇率は靴下非着用時より低かった。一方、睡眠関連指標はいくつかの変数と関係が認められた。靴下着用によるmwepの短縮、お風呂の温度上昇によるmwep、lgwepの延長が期待できる。
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