研究実績の概要 |
本研究の目的は、「死別の時」という追い詰められた状況下で発揮される家族の力、すなわち「家族リジリエンス」の詳細を明らかにすることである。初年度はまず文献で、家族リジリエンストの構成要素を整理した。家族(メンバー)が健康問題を持った状況下での、家族の力としては「家族生活力量」という考えがある。それは「家族が健康生活を営むための知識、技術、態度、対人関係、行動、情緒が統合されたもの」で、セルフケア力やエンパワメントの概念から、健康問題対処力、役割再配分、関係調整・統合力、家事運営、家計管理および日常生活を保つ力と社会資源活用技術である。 一方、リジリエンスとは「回復力」や「弾力性」であり、ある苦しい状況下から這い上がって回復する力、困難性を跳ね返す・打ち勝つ力である。リジリエンスと家族力量の違いは、力を持っている、持っていない、の特性ではなく、獲得可能なものである、という捉えである。ワルシュは危機的状況を通して家族が家族として回復する可塑性を「家族レジリエンス」という概念で提示した。それは家族のもつ対応力、塑性力、適応力で、そのキーとなる態度や認知は、a.苦難に意味づけをする, b.問題と「よく戦う姿勢」,c.肯定的な信念(ビリーフ)をもつこと,d.家族の柔軟性や結びつく力や資源,e.明確でオープンな情緒表現と問題解決コミュニケーション、であるとしている。 今年度の調査として、家族リジリエンスに特化したものではないが、I県A市における高齢者約3万人の健康・要介護状態・認知症・家族介護に関するデータを分析した。結果として、地区別で健康度(要介護度)に有意な差がみられた。要因として地区での交流など、ソーシャルサポートが推察されるが、家族介護力(リジリエンス含む)測定は次年度計画に持ち越した。看護師が行う、家族内コンフリクトにおける「メンバー間調整スキル」の抽出はできた。
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