本研究の目的は、1つは多死時代における、「死別の時」に対峙する家族リジリエンス(=困難からの回復、塑性力)を家族システムの枠組みで、その構成要素を分析することであった。2つ目は、多死の時代の地域ケアシステムから支援を考察することであり、具体的には、人々が地域包括ケアシステム下で納得のいく死を迎えられるのか、の問題意識で、その可能性を探索することであった。同時に納得のいく死を可能にするための、看護援助職のスキルの開発を計画した。 調査の焦点は3つあり、「地域実態調査」と「家族調査」そして「専門職調査」であった。まず実態調査では、初年次に地方のA市の高齢者ビッグデータを使って、地域での高齢者介護と住み方を調べ、今後の推移を考えた。さらにB市で要介護世帯でのリジリエンス調査を行った。両調査からは都会に比較して、地方の小規模市は家族リジリエンスを持っており、また文化の影響下で介護を持ちこたえようとしているが、人口減少する中では、ソーシャルキャピタル(=社会的な絆の力)を強化する必要性が示唆された。 2つ目の家族システム調査は、最終年度に「終末期を看取る家族リジリエンスの構成要素の研究」を行った。対象は壮年期がん患者を自宅で看取った家族であり、看取り時の対応の決断には、「患者の願い」を叶える「家族の凝集」の様があった。 3つ目の専門職調査は、家族支援専門看護師(以下CNS)がとらえる家族の「調整」スキルをまとめた。CNS特有の調整は、《メンバー相互作用での「反応」を見逃さずに見極め、それを手がかりに推察し、新たな反応(相互作用)を引き起こして、意向/思いのすり合わせをする》であった。 本研究では、以上の調査結果と家族看護研究会等での看護専門職への知見のフィードバックを重ね(アクションリサーチ法で)、家族リジリエンスの構成要素の解明と家族システム調整スキルの提示を行った。
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