出生前診断を受けるか否かの意思決定において,夫婦の意見が尊重されることが重要である。妊婦が出生前診断を受けるか否かの意思決定の際に,夫の知識や意識,サポートがどのように影響を及ぼしているかを明らかにし,出生前診断を希望する妊婦と夫への援助の示唆を得ることを目的として調査を実施した。 研究施設の産婦人科医が母体と胎児の経過に問題がなく本調査に耐えうると判断した,妊娠22週以降のローリスク妊婦とその夫を対象とした。妊婦も夫も出生前診断に関する認知度が高かったが,出産前診断に関する自身の知識が不十分だと8割が回答し,妊婦よりも夫の方がその割合が高かった。また,出生前診断に関する知識を医療職者から得ていたのは,妊婦も夫も2割に満たなかった。一方で,出生前診断に関する夫婦での話し合いをもったと回答したのは6割であった。しかし,話し合いが不十分だったと4割が回答した。さらに,出生前診断の受検経験のある妊婦と夫に,出生前診断に関する夫婦での話し合いを行っていないとの回答があった。 今回の調査で,ローリスク妊婦と夫の出生前診断に関する知識や話し合いの状況を明らかにしたことで,出生前診断を受けるか否かを話し合う際の妊婦とその夫へのケアへの示唆を得ることができた。出生前診断に関する話し合いを行うための知識が不十分だと思っている妊婦と夫は多く,その傾向が夫に強かったことから,妊婦だけでなく夫も利用しやすい,医療者に相談できるシステムの構築が必要である。また,非侵襲的な出生前診断であっても受検する夫婦間での話し合いは重要であり,医療者は夫婦間での話し合いの過程にも十分に配慮し援助する必要があることが明らかとなった。
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