研究課題/領域番号 |
15K11696
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
前田 留美 東京医科歯科大学, 大学院保健衛生学研究科, 特任講師 (60341971)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 小児がん救急 / 臨床判断 / シミュレーション教育 / インストラクショナル・デザイン |
研究実績の概要 |
平成28年度は当初米国UCSF Medical Centerの施設見学・看護師へのヒアリングを予定していた。しかし前年度参加した国際学会で、ほぼ全ての米国・カナダの施設が、APHON(アメリカ小児血液・がん看護学会)が作成した小児がん救急看護ガイドラインに沿って看護実践を行っているとの情報を入手し、予定を変更して、ガイドラインを参照し、臨床判断を問うためのシミュレーションシナリオ作成に注力することとした。シナリオ作成に先立ち、本研究の前段階である、筆者の造血幹細胞移植後の皮膚GVHDに対する看護師の臨床判断に関する全国調査の結果を、国際がん看護学会(2016年9月、香港)、日本造血幹細胞移植学会(2017年3月、島根・研究協力者が発表)で発表した。 シナリオは、国内・国外の小児がん救急事例について述べた文献検討を踏まえ、呼吸困難・神経症状・腹部症状を主訴とする症例とし、研究協力者である小児がん患者をケアする病棟に勤務する看護師とともに作成した。作成はインストラクショナル・デザイン(教育設計法)の手法にのっとり、本研究終了後、小児がん救急を学ぶことができるシミュレーションシナリオとして活用可能となるようにした。 作成したシナリオは、小児に多い症状であり、他の疾患との鑑別が必要な腹部症状を主訴とし、患者の主訴と疾患、検査データ等を適切にアセスメントし、小児がん救急の状態であるという臨床判断を行った上で、患者・家族に適切な対応をし、医師ほか多職種と連携して初期対応を行う、という事例とした。作成した事例は研究協力者が勤務する病棟の医師からの意見を得て、現実的な症例であり、医師と理想的な協働が行えるようなシナリオになるように注意した。本シナリオ作成のプロセスは、東アジア看護学研究者フォーラム(2017年3月、香港)で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画に含めていた米国の施設見学を中止したが、ガイドラインを入手したことで施設見学と同等の内容を入手できたと考えており、計画の変更は妥当であったと考えている。この変更に伴い、本研究の前段階である造血幹細胞移植後の皮膚GVHDに対する看護師の臨床判断について、当初予定になかった国際学会で発表することができた。 さらに、看護師の臨床判断を問うための定性調査に使用するシミュレーションシナリオが完成しており、今年度の計画は概ね順調な進展であったと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は作成したシナリオを用いて実際にシミュレーションを行い、看護師の臨床判断についてインタビュー調査(定性調査)を行う予定である。 一方で、当初は小児がん救急看護の実態調査(定量調査)を行う予定であったが、文献検討の結果、小児がん救急患者はどの施設でも年間1例未満であることが明らかになり、実際にはほとんどの看護師が対応した経験が無く、回答が得られないことが予測される。このため定量調査は中止し、定性調査で利用するシミュレーションシナリオを小児がん救急看護教育に利用できる教材に発展させられるよう、教育効果測定研究を実施する方向で検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初米国での施設見学を予定していたが、国内でも同等内容の資料が得られることが判明し、施設見学を中止したこと、この変更に伴い当初予定になかった国際学会での発表を行ったが、開催地がアジアであり、施設見学に伴う謝金等が不要であったため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度実施する定性調査の結果を国際学会で発表・国際誌に投稿するための費用として充当する計画である。
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