研究課題/領域番号 |
15K11706
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
辻野 久美子 琉球大学, 医学部, 教授 (60269157)
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研究分担者 |
村上 京子 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (10294662)
大嶺 ふじ子 琉球大学, 医学部, 教授 (40295308)
沓脱 小枝子 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50513785)
儀間 繼子 琉球大学, 医学部, 助教 (80315473)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 発達障がい看護 / 質問紙調査 / 面接調査 / M-GTA / 混合研究 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、混合研究の手法を用いて発達障がい児・者への看護の実態を明らかにし、今後の発達障がい看護の示唆を得ることである。 初年度の平成27年度は、沖縄県内で小児科を併設する病院・診療所で協力の得られた83施設の看護職2,726名に質問紙調査を実施し、看護の実態を分析した。その結果、発達障がい児・者と関わった経験がある者は約半数で、報告者の予想を超えていた。対応に困難を感じたことのある者は約7割で、困難を感じた場面は看護ケア時、処置時、指導時の順であった。そのような場面で「好ましい対応」をしていた者は多かったが、「好ましくないと思われる対応」も約1割に認められた。また、発達障がいに対する看護職の知識は十分とは言えなかった。結論として、発達障害児・者に対する看護においては、知識の啓発と共に、発達障がい児(者)の個別性に合わせた対応方法について事例検討を行い、臨床にフィードバックできる方法を検討する必要性が示唆された。今後はこの結果を発展させ、小児科を併設しない施設も対象にした県内広域実態調査を行う予定である。 次に、19名の看護職者を5つのグループに分け、フォーカスグループインタビューを実施し、インタビューの内容を修正版グラウンデッドセオリー・アプローチ(M-GTA)により分析した。その結果、発達障がい児への看護師の対応プロセスには【やむを得ぬ身体抑制】を経て【上手くいく】プロセス、【やむを得ぬ身体抑制】を得て【先へ進まない】プロセス、さらに、【やむを得ぬ身体抑制】を経ずに【先へ進まない】に至るプロセスの3通りがあることが明らかになった。その際のコアカテゴリーは【やむを得ぬ身体抑制】であった。今後は個別インタビューを通して、対応がうまくいくプロセスについて詳細に調査し、今後の看護について示唆を得たいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成27年度当初計画は、看護職への質問紙調査を実施し、結果を分析・考察することであった。この計画はおおよそ遂行出来ているが、今後も引き続き対象を増やして行う必要がある。 次に、平成28年度に計画していた看護職者への面接調査の一部を実施し、考察できたことにより、研究の進捗状況は良好で、当初の計画以上に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度と同様に、質問紙調査と面接調査を並行して実施する。 質問紙調査については、対象を広域に全県の施設へ拡大して実施し、沖縄県における発達障がい看護の実態と課題を明らかにする。看護職への面接調査については、平成27年度の調査結果を受け、3つのプロセスのうち、「発達障がい児への看護師の対応が上手くいくプロセス」に焦点をあて、今後の発達障がい看護に示唆が得られるように分析・考察する。平成28年度の計画は、フォーカスグループインタビューではなく、10名程度の看護職に個別インタビューを行う予定である。加えて、母親への個別インタビューも実施し、看護職と母親の両方についてそれぞれの思いを明らかにし、よりよい看護の構築を目指す。面接調査実施に際しては、広域質問紙調査の結果も十二分に活用し、混合研究の成果が得られるようにする。 次に新しい試みとして、看護職と母親の両方を対象にしたワークショップを企画開催し、互いに理解を深め合いながら、発達障がい看護を充実させるための示唆を得る。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初は、人件費としてデータ整理に研究補助を計画していたが、研究代表者および研究分担者でデータ整理を行った。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は面接調査を看護職および母親の両方に実施するため、今年度に比べると、インタビューデータが大幅に増えることが予測できる。したがって、今回の差額分は次年度の人件費として使用する予定である。
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