研究実績の概要 |
【東日本大震災時に一般避難所で過ごしたことの意味】 東日本大震災発生時の重症心身障害児者の経験についての研究では,一般避難所に障害者がいなかったという報告が数多くあるが,2018年度は一般避難所に「もっと居たかった」と語る経験がどのような経験なのか,重症心身障害者の母親に2016年度に行ったインタビュー調査(3月,8月の2回実施)の再分析を行った.研究協力者は,津波が到来する直前に,地域の一般避難所に避難し,そこで2か月を過ごした重症心身障害者の母親1名である.この研究協力者がどのようなストーリーとして避難所生活を語ったのかナラティブの手法を参考に分析を行った.その結果,《1.配慮してくれた避難所内》,《2.気まずさがない避難生活》,《3.一翼を担う子どもの存在》,《4.姉妹を同じ学校に通わせた決断》,《5.妹の障害を受け入れた姉》,《6.地域で生活してきた延長線上にある現在》,の6つのテーマから「自分の中で意味を伴って肯定できた避難所生活」というストーリーが構成された. 【いつもの備えで,もしもに備える 防災パンフレットの作成】 被災経験者が震災以降,どのような災害対策を行っているのか,2015年,2016年と宮城県で津波被害に遭遇した在宅重症児者の母親6名に話を聞いた.震災から4年または5年経過していた時点で,発電機のパッケージを開けていない,避難バックは片づけた,海から離れた地域に今は住んでいるため災害対策をしていない等,意識は低いように思えた.しかし,東日本大震災の発災当時の記憶は鮮明であり,避難方法や避難場所,避難時の持ち物など,とっさの家族の判断が功を奏した.災害対策の意識は時間と共に消えていくものの,物の準備を含めた災害対策が,日常生活の延長線上にあるような意識づけできるものを作成したいと考え,防災パンフレットを作成して重症心身障害児者の家族に配布した.
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