平成31年度は、在宅と通所施設それぞれのコミュニケーション関する研究結果を踏まえ、「重症児者コミュニケーションモデル」の統合化を目指した。そのため、昨年実施した在宅訪問看護の場での調査結果として示された、「親を介した重症心身障害児のコミュニケーションモデル」の調査結果を学会発表にてディスカッションし、さらに、通所施設で明らかにされたコミュニケーションモデルとの比較検討を訪問看護師、重症児者看護の専門家との検討会を実施した。 その結果、重症児者はコミュニケーションが行われる環境、関わる人、重症児者の属性となる疾患(症状)によりコミュニケーションの様相は異なることが示された。そこで母親(主養育・介護者)を中心とした「在宅型重症児コミュニケーションモデル」と、施設等での多くの人とのかかわりの中で形成される「コミュニティ型重症児コミュニケーションモデル」に分かれ、場に応じた活用が有用であるとの結論に至った。また、検討会では、通所施設では重症児者の持つ思いや考えがくみ取られていたことの指摘から、「重症児者のアドバンス・ケア・プランニング」への活用可能性も示唆された。在宅の場では、母親を介してと子どもとのコミュニケーションから把握がなされていたが、訪問看護師のエキスパート性の高さも要因であることが考えられ、調査の幅を広げることが課題として残された。また、今回対象とされた通所施設は、児童福祉法改正の狭間にあり、学齢期の子どもの施設利用が殆どなかったため、近年利用可能になった放課後学童支援での「重症児コミュニケーションモデル」を検討することが課題である。 訪問看護ステーションにおける調査結果は、国内学会発表および英文にて国内外に広く公表した。
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