出産によるストレスは、産後の女性に心理社会的影響を及ぼし、心的外傷後ストレス障害(PTSD)の発症リスクを高める。このため、帝王切開分娩後の女性の産後3ヶ月の出産心的外傷後ストレス症状に関連する要因を明らかにするために、2017年2月~2018年3月に東海地方の産科8施設で、帝王切開分娩後入院中の女性に無記名自記式質問票(入院中、産後1ヶ月、3ヶ月用)を配付し回答を依頼した。調査内容は社会的・産科的属性、出産に対する主観的ストレス、外傷体験およびストレスのある出来事の知覚の有無、出産によるPTSD症状(出来事インパクト尺度日本語版褥婦版;IES-R-J-PWV)、産後うつ症状(エジンバラ産後うつ病自己評価票;EPDS)を測定した。分析方法はPTSD症状の関連要因の有無別にMann-WhitneyのU検定を行い、尺度間の相関関係はSpearmanの相関係数を算出した。 3時点の質問票すべての回答を得られた対象者255名のデータを分析した結果、IES-R-J-PWV25点以上のPTSDハイリスク女性は6名(2.4%)であった。産後3ヶ月の出産によるPTSD症状を強めた要因は、初産婦、早産、双胎、低出生体重児、産後1ヶ月の出産の外傷体験および出産のストレスの出来事の知覚、産後1ヶ月のPTSDおよび産後うつ病ハイリスクであった。さらに、産後3ヶ月の出産によるPTSD症状は、産後1ヶ月、3ヶ月の出産の主観的ストレスおよび産後うつ症状と有意な正の相関がみられた。以上より、帝王切開分娩後の女性の入院中および産後1ヶ月にPTSD発症リスクのある女性に着目する重要性は高く、ストレスのある女性を早期に見出し、出産を肯定的に捉えられるよう心理的サポートに努める必要がある。 最終年度(2018)はデータ分析、結果の検討を行い、成果を日本助産学会学術集会で報告し、論文投稿に向けて準備を進めた。
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