研究課題
研究の目的: ITSEAは、1~3歳の子どもの社会・情緒的発達の問題、その子の持つ能力について査定することができる。 ITSEAの日本における標準化、カットオフポイント設定、質問紙、マニュアルの作成により、本尺度の日本での活用を目的とした。研究の概要:自閉スペクトラム症の診断を受けている、あるいは疑いのある児を臨床群、特に発達上の問題のない児を対照群として、その養育者に日本語版ITSEA質問紙への記入を依頼、同時に、新版K式発達検査用紙2001による検査を実施した。2015年~2019年に、臨床群47人、対照群62人のデータを収集した。本研究では、日本語版ITSEAの妥当性の検討のために、日本の自閉スペクトラム症の児の得点の傾向について、対照群との比較、新版K式発達検査用紙2001との相関、原版ITSEAの自閉スペクトラム症児のデータとの比較により検討した。臨床群は、外在化、内在化、調整不全領域得点が高く、能力領域得点が低い傾向がみられた。新版K式発達検査結果との関係においては、臨床群の日本語版ITSEA得点が高ければ、新版K式発達検査の領域得点も高い傾向だった。日本語版ITSEAによるアセスメントにより、臨床群の外在化、内在化、能力問題、2つの項目群において対照群よりも有意に多く問題ありと判定された。属性をマッチングさせた62例においても同様の傾向であった。原版ITSEAとの比較では、外在化、能力問題領域では日本語版ITSEA得点が高く、内在化、調整不全領域得点は、低い傾向であった。日本語版ITSEAの自閉症スペクトラムについての弁別力が示唆された。加えて、原版ITSEAとの得点傾向の相違が明らかになったため、日本での活用においては日本語版ITSEA完成の必要性がある。2020年はデータ分析と論文執筆、日本語版作成のための準備を実施した。結果について、投稿準備中である。