本研究は注意欠如・多動症(以下、ADHD)児の不適応問題と夫婦の関係性を含む家族機能との関連を明らかにすることである。今回の研究では、母親を対象として、①現在を起点に過去の養育のこと、②どのような子どもの行動が親を困らせるか、③子どもの問題行動に直面した時のエピソード(その時母親が覚えた感情や対処方法等)、④育児を手伝ってくれる人がいるかなどの質問項目を準備して半構成的面接を行った。また、プレ調査の結果、ADHD児の親の特性として、親自身がADHD(発達障害)の特性を持っていることがあり、この場合、実行機能や自己制御に関連した養育面での困難さがあることが子どもの不適応行動や夫婦関係にも影響している可能性が考えられた。そこで親が持つADHDの特性に関しても把握していった。 合計10名の母親に対してインタビューを実施することができた。面接内容を正確に逐語化し、夫婦関係や子どもの行動と関連した語りを抽出して切片化しコーディングした。次にコードの意味内容の類似性と相違性を検討し、類似するコードを複数集めて抽象度を上げたサブカテゴリ―名を付け、サブカテゴリーについてのコードと同様の方法で分析を行い、抽象度を上げてカテゴリーとした。分析の結果、夫婦関係、父親側の要因、母親側の要因、養育環境のカテゴリーに分類できた。分析結果の妥当性確保のため、母子関係を専門とする研究補助者に対して申請者と独立してデータ分類を依頼した。
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