研究課題/領域番号 |
15K11744
|
研究機関 | 平成医療短期大学 |
研究代表者 |
近藤 直実 平成医療短期大学, 看護学科・リハビリテーション学科, 学長・教授 (50124714)
|
研究分担者 |
小玉 ひとみ 平成医療短期大学, 看護学科, 教授 (60564705)
熊田 ますみ 平成医療短期大学, 看護学科, 教授 (70601805)
松野 ゆかり 平成医療短期大学, 看護学科, 准教授 (10647556)
松井 永子 平成医療短期大学, 看護学科, 非常勤講師 (90334929)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | アレルギー疾患発症 / テーラーメイド的予知法 / アレルギー疾患進展抑制 / 遺伝的因子 / 環境因子 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、アレルギー疾患の進展あるいは抑制に関わる因子を系統的に分析して、テーラーメイド的に予知法と予防法を確立することである。平成28年度には、その因子について、特異IgE抗体(RAST)や遺伝子について検討を進め、以下の結果を得た。対象は441例である。 (1)喘息について ① 1歳半で喘息と診断された児のうち、1歳半でのダニやハウスダストのRASTが高いと、3歳でも喘息の可能性が高い。逆に、RASTが低いと、3歳では喘息や他のアレルギー疾患の可能性が低い。(2)食物アレルギーについて、①1歳半で卵RASTが高いと、1歳半で食物アレルギーであってもなくても、3歳では食物アレルギーに罹患しやすい。②一方で、1歳半で食物アレルギーでも、1歳半の卵RASTが低い児は、3歳では食物アレルギーは軽快しやすい。これらの児では、免疫寛容が成立したと考えられる。(3)アトピー性皮膚炎について、①1歳半でアトピー性皮膚炎や他のアレルギー疾患があってもなくても、1歳半の卵RASTが高いと、3歳でアトピー性皮膚炎に罹患しやすい。②1歳半での卵RASTが低ければ、3歳でもアトピー性皮膚炎に罹患しにくいか軽快している。 (4)次いで、遺伝子多型とアレルギー疾患特に喘息の発症との関連では、① IL12B C3757TのCC、 IL13 Arg110GlnのGA、 IL18 C-133GのCC ADRB2 Arg16GlyのAAは1歳半で喘息やアレルギー疾患でなくても、3歳で喘息になりやすい傾向がある。② IL4Ra Val50IleのGG、 IL18 C-133GのCC、 ADRB2 Arg16Gly のGGは1歳半で喘息になりやすく、3歳でも喘息は軽快しにくい。③LTC4S A-444CのCCはまれであるが、CCなら喘息などになりにくい。 (5)環境因子、特に、花粉、ハウスダスト、気圧、雨pHなどについても検討を進めている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画のように、本研究の目的は、どのような遺伝的素因や環境因子が関わることにより、アレルギー疾患が進展あるいは抑制されるかを系統的に分析して、テーラーメイド的に予知法と予防法を確立することである。平成27年度には、疾患特異的に、特に、家族歴が重要であることなどが示された。平成28年度(本年度)には、さらに詳細な解析が進められた。すなわち、インフォームドコンセントの得られた441例を対象に、1歳半でアレルギー疾患を有する児あるいは有さない児が3歳でどのような経過をとるか、その進展あるいは抑制に関わる因子について、特異IgE抗体(RAST)や遺伝子について検討を進め、研究実績の概要に記載されたような、一定の重要な知見が得られた。 (1)喘息については、1歳半でのダニやハウスダストのRASTが重要であること、(2)食物アレルギーについては、1歳半での卵RASTが重要であること、(3)アトピー性皮膚炎についても、1歳半の卵RASTが重要であることが示された。牛乳RASTでも、ほぼ同様の傾向はみられたが、卵RASTほどではなかった。これらのRASTスコアはそれぞれのアレルゲンでの感作状況を示していることから、環境因子としてのアレルゲンの感作が、アレルギー進展や抑制に重要な因子であることが示された。さらには、遺伝因子として、(4)遺伝子多型とアレルギー疾患特に喘息の発症との関連を分析した。研究実績の概要に記載されたように、IL12B、 IL13、 IL18、ADRB2, IL4Ra、 IL18、LTC4Sなどの遺伝子が遺伝的因子として重要であることが示された。 さらに、環境因子の検討もすすめられており、これらの成果は、テーラーメイド的予知法と予防法の確立に大きく寄与する。 以上のように、ほぼ順調に進捗している。
|
今後の研究の推進方策 |
上記の研究の進捗を受けて、本研究の最終年度である平成29年度には、基本的には、当初計画通り研究を推進し、さらに最終年度として、まとめる。 (1)平成27、28年度に引き続き、アレルギー疾患の進展あるいは抑制に及ぼす影響をアレルギーの遺伝的素因と環境因子につき分析する。その素因と因子について平成29年度には、特に、28年度の喘息との関係に引き続いて、アレルギー疾患として、食物アレルギー、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎などと種々の遺伝子多型との関連の分析を行う。 遺伝子としては、IL12B、 IL13、 IL18、ADRB2, IL4Ra、 IL18、LTC4Sなどであり、さらに、アレル解析も行う。 (2)以上の成績と、28年度までの家族歴、特異IgE抗体(RAST)などの結果も含めて、総合的に、3歳児で喘息などアレルギー疾患の発症増悪に進展した要素を統計学的に系統的、網羅的に明らかにする。どのようなアレルギー疾患(アトピー性皮膚炎、食物アレルギー、喘息等)を発症した児が、どのような遺伝的素因や環境因子に影響されるとやがて進展して、喘息などアレルギー疾患を発症進展するかを明らかにする。一方、逆にどのような因子が喘息などアレルギー疾患の進展発症を抑制するかをテーラーメイド的(個別的)に分析する。 (3)環境因子について、花粉、ハウスダスト、気圧、雨のpH分析などの地域差や季節差とアレルギー疾患の発症、進展、抑制との関連につき解析し環境因子の影響を解明することを加える。 (4)以上の結果をもとにして、後方視的分析も含めて、アレルギー疾患児のその後の経過における喘息などアレルギー疾患の発症、増悪に対する予知予防効果の検討とテーラーメイド的予知法と予防法を確立し社会に貢献する。
|