研究実績の概要 |
本研究の目的は,老人保健施設(老健施設)の看護師の組織コミットメントと専門職性に関与する要因およびその他の主要な要因との関連を統計的に分析し,因果モデルの検証を基に専門職性を高める組織コミットメントモデルを構築することである. 前年度に実施した面接調査では,老健施設勤務経験のある老年看護専門看護師(CNS)と老健施設の看護師長への面接調査において「老健施設における看護師の専門職性への認識と特徴」として4つの特徴のカテゴリーが抽出された.そのため,今年度はこの結果を質問紙の看護師の専門職行動を測定する「専門職行動」の質問項目に反映し,質問紙を作成した.質問紙調査は,研究対象施設の選択としてWAMNET介護事業者情報に登録されている全国の介護老人保健施設の3931施設の中から無作為抽出(等間隔抽出法)を使用し1,000施設を抽出した.その施設で勤務する看護職を対象に,一施設あたり5部の質問紙(計5000)部を送付した.28年度末で1195部を回収(回収率24%).ほぼ予測通りの回収が得られ,統計的に分析した.分析の結果として、情緒的コミットメントは専門職行動を促進するが、継続的コミットメントは専門職行動を抑制することが明らかになった.また、職務満足度が情緒的コミットメントを高める要因であることが明らかになり,これらのことから,専門職行動を促進するためには,職務満足度の向上が必要であると考えられた.さらに, 新たな知見として, 組織コミットメントの3つの構成要素(情緒的・規範的・継続的)は情緒的から規範的へ, 規範的から継続的に, そして継続的から情緒的に正の関係が認められた.このことから,専門職行動を抑制すると考えられる継続的コミットメントを情緒的な組織とのつながりである情緒的コミットメントに変化させることも可能であることが示唆された.
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