研究課題/領域番号 |
15K11766
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研究機関 | 横浜創英大学 |
研究代表者 |
本江 朝美 横浜創英大学, 看護学部, 教授 (80300060)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | Sense of Coherence / ケア / カオス / セルフヒーリング / ヒーリングタッチ / 瞑想 / ストレス / 介護者 |
研究実績の概要 |
本研究は、高齢者介護負担を抱えるケア者のセルフヒーリングプランを作成することを目的とし、これまでに米国のエネルギー療法の国家資格であるヒーリングタッチ実践者が自らのエネルギーフィールドのセルフケアとして行っているセンタリング・グランディングの瞑想を参考にしてセルフヒーリング・プログラムを作成してきた。 そこで本年度は、高齢者介護に携わるケア者のセルフヒーリング・プログラムの実践中における生体カオス時系列反応(アトラクタ、リアプノフ指数、エントロピーの変化)の分析結果から、高齢者介護に携わるケア者のセルフヒーリングの実践は、単なる安静と異なり、交感神経を活性化させ、強い柔軟性と適応性のあるカオス反応を引き出すとともに、健康生成(Sense of Coherence; SOC)に関与する可能性があることを考察し、原著論文として纏めた。また、前年度末に実施した高齢者介護に携わるケア者の12週間に及ぶセルフヒーリングの介入実験において、参加協力者のセルフヒーリングが日々適切に実践されたか、データ測定時の実験環境はデータに影響がなかったか等について精査し、分析対象となるデータの特定と整理を行った。今後これらのデータを分析し考察するにあたり、国内外における最新の関連した文献の検討も行った。 さらに、本研究はセルフケアの現象をホリスティックに捉える試みとして、1980年代半ばに誕生した最新先端科学であるカオス理論を用いていることから、看護において馴染みの少ないカオスについて、学会で紹介した(ホリスティックなケア技術教育)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
高齢者介護ストレスを抱えるケア者のストレス対処に関する文献をレビューした。そこで、ストレス対処力(Sense of Coherence;SOC)は、ケアの意識と関連し、日々遭遇するストレスによって増大するエントロピーに抑制的に働くという理論仮説に着目した。これにより、ケアの専門家が自分のために行っているセルフケアは、SOCの維持・向上に働くという仮説を立て、まずは米国のエネルギー療法分野で唯一国家資格であるヒーリングタッチを学び、その実践者が自らの心身を調えるために行っている瞑想を参考に、セルフヒーリング・プログラムを作成した。 作成したセルフヒーリング・プログラムを評価するにあたり、セルフヒーリングが扱う現象はエネルギー現象であることから、これまで評価指標として頻用してきた自律神経系機能や脳波等では限界があると考え、現象の複雑性をホリスティックに時系列的に捉える生体時カオス反応を用いることとした。この生体カオス反応は1980年代に誕生した最新先端科学のカオス理論に基づくもので、看護の既存の文献が少なく、想定外の入念な文献精査を必要とした。その上で高齢者介護に携わるケア者を対象とした介入研究を行い、セルフヒーリングの生体の柔軟性や適応性を引き出す可能性が明らかとなり、論文化した。 さらに、セルフヒーリングの継続的実践の有効性を検証することを目的とし、高齢者介護の現場で介護に携わるケア者を対象に、12週間の継続的セルフヒーリングの無作為化比較試験(RCT)を実施した。この実施は、参加協力者自身が自宅で自律的に行うものであったこと、実験は介護の現場で行ったこと等より、データへの影響要因の把握と研究参加者の実践状況の確認などからデータの特定と整理にことのほか時間を要した。また、得られた結果を考察するために、さらに最新の文献を検討するとともに講習会・学会等で最新の知見を得た。
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今後の研究の推進方策 |
今後はセルフヒーリング・プログラムの無作為化比較試験結果を、ストレス対処力(Sense of Coherence;SOC)や自尊感情による主観的指標、および生体カオス性、自律神経系機能による客観的指標の両観点から分析し、ケア者がセルフヒーリングを継続的に実践する有用性について考察し、論文化する予定である。また、これらの研究成果は、さらに最新の知見を踏まえて、高齢者介護に携わるケア者が自らのストレスに対処する方策として、セルフヒーリングをコアとするヒーリングプランを完成させる。完成させたヒーリングプランは、ホームページ等で広く一般に公開し、高齢者介護に携わるケア者への支援活動とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初は今年度で全ての研究計画を終了させる予定であったが、評価指標に関する既存の文献が少なく、想定外の入念な文献精査とプレテストの実施があったこと、また無作為化比較試験の実施において、研究への参加協力者の自律的な実践やデータ測定時の実験環境の確認からデータの特定に時間を要したことから、研究計画の遂行に遅れが生じた。 これらのことより、次年度の助成金は、新たな知見を収集しつつ、今年度までに得た研究成果を考察し、論文化するとともに、ヒーリングプランを完成させ、ホームページ等で広く一般公開するために使用する計画である。
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