本研究は、認知症の人とその家族が生活上の重要事項を選択する際、お互いの意向が尊重された決定を円滑に行うための意思決定支援プログラムの作成を目指すことを目的とする。 プログラムの1つである意思決定支援シートについて、2015年度に実施した調査(介護支援専門員を対象に、認知症の人に介護サービス導入する際に考慮する要因を検討した調査)の回答を因子分析した結果、通所サービスでは「生活・介護環境と介護者の思い」、「本人のサービス利用に対する思い」、「介護負担の度合い」、「本人の病状」の4因子15下位尺度、訪問サービスでは「本人のサービス利用に対する思いと人となり」、「介護負担の度合い」、「本人の病状」、「生活環境」、「介護環境」の5因子17下位尺度、施設入所では「介護環境と負担の度合い」、「本人と介護者のサービス利用に対する思い」、「本人の病状」の3因子13下位尺度が抽出された。それらの結果に基づき、2017度までに作成した試案について現場の介護支援専門員と議論を重ね、介護サービスの導入検討時に考慮する要因の過不足について検討した。その結果を受け、2018年度には、介護支援専門員を対象に実施した、認知症の人の意思決定に関連する要因に関する調査の自由回答を質的に分析し、考慮する要因として、調査で提示した27項目以外に「家族との関係性」、「本人のADL」、「家族の希望」、「本人の意思」、「家族の性格」の5項目を抽出した。また、スウェーデンの高齢者施設を訪問した際、高齢者施設入所時の経緯や支援方法について情報交換し、意思決定支援に関する示唆を得た。これらの結果を受け、意思決定支援シートを完成させ、使用可能性を問うための調査の倫理委員会の承認を得た。現在、アンケート調査の準備段階であり、介護支援専門員に調査実施予定である。
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