研究課題/領域番号 |
15K11772
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研究機関 | 高知県立大学 |
研究代表者 |
竹崎 久美子 高知県立大学, 看護学部, 教授 (60197283)
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研究分担者 |
渡邊 美保 高知県立大学, 看護学部, 講師 (70571313)
岡本 麻由美 高知県立大学, 看護学部, 助教 (70737634)
塩見 理香 高知県立大学, 看護学部, 助教 (70758987)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 認知症高齢者 / 看護ケア / 術後回復期 / ケアガイドライン / 安楽 |
研究実績の概要 |
本研究は、急性期医療機関に入院し、手術等の治療を受けたことに伴い、短時間でも安静保持を行わなければならない認知症患者に対する看護ケアのガイドライン(指針)を作成しようというものである。 平成27年度の文献検討を受けて、平成28年度は、実際の臨床現場において認知症高齢者の安静保持についてはどのようなことが課題となるかについて、フォーカス・グループ・インタビューを行った。急性期病院での看護師経験年数が3~5年以上あり、なおかつ現在認知症高齢者の術後ケアを行っている病棟で1年以上勤務している看護師を対象とし、1グループにつき5名前後、2施設3グループのインタビューを実施した。結果として明らかになった『認知症高齢者の術後ケアにおける困難』としては、点滴などを抜いてしまうことやせん妄との区別がつかず対応に苦慮することといった「対応方法への苦慮」、安全のためには身体抑制も必要と思うが罪悪感も感じる「安全と抑制の間のジレンマ」、夜勤帯のスタッフ数の限界や医師にも理解が得られないなどの「協力態勢の限界」、そして夜間帯に声を立てたり人手がとられることでの「他患への気兼ね」の4つが上がった。 安静が守れないことで、患者自身に新たな負担をかけることや対応自体もなかなかうまくいかないジレンマを、看護職だけで抱えている状況が明らかとなり、こうした状況に対する具体のケアガイドラインが必要とされていることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
文献検討とフォーカス・グループ・インタビューで課題を焦点化し、最終年度でスペシャリストへのインタビュー調査を実施し、ガイドラインを策定予定であった。平成28年度までの結果を受け、最終年度の平成29年度で、スペシャリストへのインタビューとまとめを行う予定であるため、概ね順調に進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究結果を学会で公表し、発表に関心を示してくれたスペシャリストにインタビューを依頼しようと考えている。また学会会場には、ジェネラリストの人たちも来場しているため、その人達からもスペシャリストに関する情報や、どのようなガイドラインを欲しいと考えるかなどについて情報収集予定である。 スペシャリストにはインタビューを通して、ジェネラリストの人たちが実践可能なケアについて具体にアイデアを聞き、できるだけ一般のスタッフにとって活用しやすいガイドラインを明らかにできたらと考えている。また課題の中には、個々のスタッフが対応するだけでは解決が難しい組織的な課題も上がっていたため、個々のベットサイドケアに限らず、組織的な取り組みとしても指針が示せたらと考えている。更に、実際には認知症との診断が明確な高齢者はむしろ少ないといった状況もあるので、今回のガイドラインは、認知症の有無にかかわらず、基本的な対応のガイドラインとして明らかにしたいと考えている。汎用性が広いことにより、結果的に認知症高齢者にとっても安楽が保証されるケアのガイドラインが明らかになればと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
最終調査となるスペシャリストへのインタビュー調査は、平成28年度内に実施予定で旅費、データ整理の人件費として予算確保していたが、県内に限らず対象者を広げるために専門学会を待って学会会場にて広く県外の人材にも広げることに変更したため。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度、名古屋で開催される老年学会は隔年開催の合同学会となっている。この学会への参加と、そこで得られた人材に対してその後インタビューを実施する。本年度に繰り越した予算は、その調査のための旅費と、その後のデータ整理のための人件費として執行予定である。
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