研究課題/領域番号 |
15K11778
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研究機関 | 金沢医科大学 |
研究代表者 |
小泉 由美 金沢医科大学, 看護学部, 准教授 (70550763)
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研究分担者 |
橋本 智江 金沢医科大学, 看護学部, 助教 (30515317)
平松 知子 金沢医科大学, 看護学部, 教授 (70228815)
河野 由美子 金沢医科大学, 看護学部, 講師 (90566861)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | タクティールケア / 施術者のリラクセーション効果 / 介護技術 / 認知症高齢者 / 家族介護者支援プログラム |
研究実績の概要 |
タクティールケアは、手掌で相手の背部や手部・足部をなでるようにゆっくり一定の法則で触れるスウェーデンにおいて開発されたタッチケアである。認知症高齢患者の行動心理症状の緩和や情緒の安定、補完療法としてのストレス、疼痛の緩和や睡眠の改善等の有効性が報告されている。我々は、実践記録からの内容分析による効果の抽出、健康女性や更年期女性へのリラクセーション効果および青年期女性の月経痛緩和などの検証を行ってきた。さらに、タクティールケアはケアを提供する施術者にもリラクセーション効果が主観的評価ではあるが報告されていること、ケアの質維持のために、一定の圧力や速度・手法を習得する必要はあるものの解剖生理学的な知識や特別な道具や熟練した技術がなくても施術可能であること等から、認知症高齢者の家族介護者の介護技術としてタクティールケアを導入し、介護負担の軽減に向けた家族介護者支援プログラムの開発に取り組んでいる。 第一段階として、タクティールケアを施術する側のリラクセーション効果を客観的に検証するために準実験研究を行った。結果、タクティールケア施術中の副交感神経活動の活性化と交感神経活動の低下、施術後の唾液分泌型免疫グロブリンA濃度の増加や唾液の酸化度の低下、二次元気分尺度の活性度、安定度、快適度の増加等から客観的にタクティールケア施術者のリラクセーション効果を裏付けることができた。次の段階として、認知症高齢者の家族介護者の介護技術としてタクティールケアを導入するために、タクティールケアの手法の簡便化および簡便化した手法での効果検証、指導方法および評価の検討を行い、認知症高齢者の家族介護者支援プログラムを作成する。本支援プログラムの評価は小規模多機能型居宅介護を利用している家族介護者を対象に進めていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
認知症高齢者の家族介護者の介護技術としてタクティールケアを導入し、介護負担の軽減に向けた家族介護者支援プログラムの開発の第一段階として、タクティールケアを施術する側のリラクセーション効果を客観的に検証し、研究成果を報告した。 次の段階として、認知症高齢者の家族介護者の介護技術としてタクティールケアを導入するためには認定者と同様の手法を実践することは困難であると考え、手法の簡便化・指導方法を検討している。タクティールケア体験を希望した認知症高齢者とその家族介護者2組を対象に両者それぞれがタクティールケアを受ける体験、家族介護者にはタクティールケアを指導の下で実践する体験をしていただき、体験時の反応を観察し、感想・意見を聴取した。タクティールケアを受ける体験では認知症高齢者、家族介護者ともに穏やかな表情で、「気持ちがよい、落ち着く」などの反応であった。家族介護者がタクティールケアを認定者が行う手法にそって実践した体験では、「実際に自分が行うとなるとこれだけの手順を覚えて実施するのは大変である」、「圧のかけ具合やなでる速度の加減が難しい」、「毎回、背中と手で30分は長い、いつもじっとしてくれるわけではない」、「時間を計ることに気を取られてしまう」、「手に塗るオイルの匂いが好きではない、べとつく」などの意見が聴かれた。これらの意見を分析し、文献検討を行いながら、施術時間の短縮と手技の簡略化、使用するオイル等を検討している。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、認知症高齢者の家族介護者の介護技術としてタクティールケアを導入するにあたり、施術時間や手技を簡略化したタッチケアを考案する。準実験研究的に、考案したタッチケアの施術時間短縮と効果の関連、手技の簡略化と効果の関連を検証する。検証結果をふまえて、認知症高齢者の家族介護者の介護技術としての指導内容や方法、介入の評価方法などを検討し、認知症高齢者の家族介護者支援プログラムを作成する。 次年度は、作成した支援プログラムにそって、研究協力の承諾を得た小規模多機能型居宅介護を利用している家族介護者を対象に、デイサービス・ショートステイ利用時に考案したタッチケアの体験および手法の指導を行うとともに、短期効果として施術時のリラクセーション効果を検証する。さらに、居宅で週1~2回のペースで考案したタッチケアを実践してもらい、在宅でケアを継続する効果を経時的に6ヶ月間、家族介護者や認知症高齢者の状態とタクティールケアの実施状況で分析・比較する。研究の成果は、国内外の学会で報告する。
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次年度使用額が生じた理由 |
ほぼ当初の計画通りに使用することができたが、情報収集における出張旅費が当初の予定よりもコストがかからなかったため差額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度の繰り越し分も含め、平成28年度は学会参加や学会発表における旅費及び論文翻訳料に使用する。
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