研究課題
社会の高齢化の進行に伴い今後も認知症高齢者の増加が見込まれる中,認知症高齢者ならびに介護者のQuality of Life(QOL)の向上が求められ,体制作りが進められている.最終的なQOLの評価には対象者本人の精神的健康の測定が重要であるが,認知症高齢者の場合,自身の主観的な心理状態の言語的表出に困難を伴うと同時に,回答の信頼性を確認することが困難であるが,代表的な精神的健康の評価尺度は自己評価によるものが多く,実施自体が困難かつ回答の信頼性も十分に保障されにくい.以上より,認知症高齢者の精神的健康の評価に際しては,自己評価と同程度の信頼性,妥当性を有する他者評価尺度のニーズは高いと考えられる.以上を踏まえ,本研究は,認知症高齢者において利用可能な他者評価式精神的健康尺度を開発することを目的とし実施した.既存の精神的健康尺度から測定項目を選定し,65-98歳の認知症高齢者ならびに本人をよく知る他者(配偶者30名,子ども52名,その他5名)87組に対し精神的健康度を問う同様の項目9項目を聴取し関連を検討した.その結果,項目ごとに他者評価と本人評価の一致度(Kappa係数)を算出したところ0.05~0.29で,項目ごとの一致度は低かった.9項目を合計して得点を算出し,他者評価と本人評価の関連を検討した.信頼性係数(Cronbach α)は他者評価0.90,本人評価0.86と高い値を示した.また他者評価と本人評価得点間で級内相関係数を求めたところr=0.71と強い相関関係が示された.個々の項目の一致度は低いものの,評価の方向性は他者と自己で一致しており,得点を合計することで妥当な評価が可能であると考えられた.上記に加え,一部の検査については自己評価法による精神的健康尺度を中心とした面接調査によりデータを収集し,地域高齢者を対象とした研究成果の一部を学術誌,および学会で発表した.
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件) 学会発表 (19件) (うち国際学会 3件)
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