研究課題/領域番号 |
15K11787
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
森 千鶴 筑波大学, 医学医療系, 教授 (00239609)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 統合失調症者 / メタ認知 / リアリティモニタリング |
研究実績の概要 |
リアリティモニタリングは、知識や記憶、信念の情報源を区別することであり、統合失調症者は、リアリティモニタリングの異常が起こる。そのため断片的で、部分的な情報でも十分な証拠になり、結論が飛躍してしまうことが指摘されている(佐藤,2008)。 そこで統合失調症者の病気受容のプロセスとリアリティモニタリングの実態を明らかにすることを目的に、対象者10名にインタビュー調査を行った。対象者は全員精神科病院に受診中20歳以上の統合失調症者で、病気について告知され、疾病教育を受けたことがあるものであった。研究に先立ち、筑波大学医学医療系医の倫理委員会及び対象施設の倫理審査を受審し、承認後に実施した。インタビュー中にメモをとり逐語録を作成し、内容分析を行った。 対象者は9名男性、1名が女性であった。統合失調症者は、幻覚や妄想の起こりはじめは【違和感】や誰かにはめられているという【猜疑心】を抱いていた。この違和感を自分なりに解釈して、【アドバイスを受けている】と考えたり、自分は特別な存在でなければならないから【自分が注目されている】考えるようになっていた。しかし同時に【自分では止められない】と感じていた。さらに薬物療法や心理教育などを通して、過去を振り返り【理性的ではなかった】、【病気だった】、【本来の自分とは違っていた】と思うようになることが認められた。 統合失調症者は、幻覚妄想状態にあるときには、リアリティモニタリングの異常があるものの、同時に『自分では止められない』という感覚があり、どこか客観的にみつめようとするメタ認知機能が働いているのではないかと考えられた。しかし、これは今回の対象者が病気を受けとめようとしているためとも考えられた。そのため、今後追究することが課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初、対象者は20名と計画したが、病名を告知され疾患教育を受け、さらに研究に協力が得られた対象者は10名であった。当初の計画より人数は少なかったが、1人のインタビューは約30分~1時間程度で十分な回答を得ることができ、分析も可能であった。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、平成27年度に得られた結果及び文献検討からメタ認知機能を高めるプログラム(案)を作成し、専門家の意見を聞きながら完成させる。 プログラムが作成できた場合には、対象者に実施し、対象者の変化を明らかにする予定である。
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