研究課題/領域番号 |
15K11787
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
森 千鶴 筑波大学, 医学医療系, 教授 (00239609)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 統合失調症者 / メタ認知 / リアリティモニタリング |
研究実績の概要 |
リアリティモニタリングは、現実に知覚したり体験した出来事と、内的に作り出された出来事を区別することである。統合失調症者は幻覚などの症状により、リアリティモニタリングに障害をきたす。しかし、薬物療法や疾患教育などにより「何かが違っていた」「おかしかった」「自分が自分でなかった」と表現できるようになることがこれまでの分析で明らかになった。これは、適切な刺激と不適切な刺激の区別がつかないまま、自己生成した行為を他者に帰属し、新しく提示された証拠に対して自己の信念としていると乾(2012)が述べていることと同様であると考えられた。 これらのことから統合失調症者は自己感覚が得られにくく、認知的操作に対する情報が十分に形成されていない時期には、適切な治療を受けることによって「あの刺激(幻覚や妄想)は何であったのか」と考え、自分なりに解釈するようになるのではないかと思われた。また過去の体験を振り返ることや、今自分が感じていること、それに対して思っていることなどのメタ認知を高める援助を実施することが、リアリティモニタリングの改善には有用なのではないかと考えた。 しかしながら、これまでの看護援助は、その日の身体状況や精神状態の観察が多いこと、日常生活、セルフケア能力を高める支援が中心であり、患者のメタ認知能力を意識したものではないことも明らかになった。そこで、様々な文献から日々の看護援助の中に「過去の体験との比較」や「今後の目標」「なぜその目標を設定したのか」「現在の状況をどのようにとらえているか」、さらに「目標達成のために何が必要か」などの問いかけを増やすようなプログラムの作成を試みた。 今後、作成した援助プログラムの有用性を明らかにすることが課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
対象者からのインタビュー、現在実施している看護援助の分析、文献検討を通じてメタ認知機能を高めるプログラム(試案)を作成することができた。 当初、作成したプログラム(試案)を対象者に実施することも考えていたが、28年度内に実施することはできなかった。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は作成したプログラム(試案)を対象者に実施し、有用性を明らかにしていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
プログラム(試案)を作成することに手間取り、入院中の統合失調症者にプログラム(試案)を実施することができなかった。プログラム(試案)の作成費用や学会発表も東京であったため交通費などに齟齬が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度は対象者へのプログラム(試案)の有用性を明らかにするため、プログラム(試案)の作成費用やプログラム(試案)実施のために病院に赴くこと、学会発表などで有用に活用する。
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