研究実績の概要 |
本年度は引き続きCVPPPトレーナー養成研修中に質問紙による調査を行った。 調査票は11月までに544名分が回収された。調査項目として年齢、性別、勤務年数、職場の安全安心度、研修前後の変化として攻撃性に対する態度(野田ら,2014)、抑制手法への臨床姿勢(野田,2011)、Essen病棟文化尺度(野田ら,2014)、Buss-Perry攻撃性質問紙を用いた。対象のうち看護師のみに限定し444名を分析の対象とした。平均年齢は37.0才であった。研修前後の変化で患者の攻撃に対する態度の肯定的な側面が平均(標準偏差)で研修前13.2(2.3)研修後12.7(2.5)で有意に肯定的になった。(t=4.0,p>.0001)。否定的な側面でも研修前32.4(6.4)研修後39.4(7.5)で有意に否定的な態度が減少した(t=-20.9,p<0.0001)。次に攻撃性への態度と看護師の攻撃性、自己効力感との相関を見ると短気な者、身体攻撃性の高い者のほうが患者の攻撃に対して否定的傾向(r=-.15,p=.003)(r=-.19,p=.0001)。また言語的攻撃性の強い者のほうが研修前に自己効力感が高かった(r=.18,p=.0002)。病棟文化尺度では安全安心度が高いほうが患者間の仲間意識、相互サポートが高く(r=.14,p=.006)、治療的な関心が高い(r=.29,p<.0001)傾向がみられた。抑制に対する姿勢では男性3.6(.77)女性3.43(.73)で男性のほうが強制の注射を承認していた(t=3.0,p=003)。 看護師が短気な方が患者に陰性感情を持ちやすかったことは今後虐待防止のために示唆を与えるものと考えられた。患者同士サポートできる環境でスタッフも安全安心になれた。また、強制注射で男性の方が強く承認したのは男性は実際に注射の直接ケアにかかわることが多いためと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度対象数は444名であり、おおむね対象数も適切にデータ収集が行えた。昨年度尺度を見直して、攻撃性に対する態度(野田ら,2014)抑制手法への臨床姿勢(野田ら,2011)、Essen病棟文化尺度(野田ら,2014)、Buss-Perry攻撃性質問紙を用いてみたところ、看護師の個人特性と患者の攻撃に対する態度や病棟風土と安全安心の間に関係がありそうなことが分かった。また抑制手法について男性の方が強制的な注射を承認しやすいことが明らかになった。このことは今後の攻撃性に対するマネジメントの研究の方向性に示唆を与えるものとも思われ、十分な結果として示せたと思われる。
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