研究課題/領域番号 |
15K11791
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
岡本 亜紀 岡山大学, 保健学研究科, 講師 (10413527)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 包括型地域生活支援 / リカバリー / 精神障害を持つ人 / 病院看護師 / 看護実践 / 教育プログラム |
研究実績の概要 |
精神障害からのリカバリーには、社会の中で有意義な生活を送り、新しい自分に変化していくという主観的体験が含まれる。本研究目的は、医学モデルに偏りがちな精神科病棟の急性期医療にリカバリー概念を適用させることである。 平成28年度は、病棟看護師の考え・姿勢・態度をリカバリー志向に転換する研修プログラムを改良する資料を得るための質的分析と、プログラムの評価指標を改良する資料を得るための質問紙調査を実施した。研究参加者:精神科の病院看護師9名。方法:日本語版フィデリティ尺度値を基準としたACT機能の一定水準をクリアしているACTチームの協力を得た。包括型地域生活支援(Assertive Community Treatment: ACT)は、重度精神障害を持つ人への医療と生活を生活の場で支援する支援システムで、リカバリー志向の支援を実施している。研究参加者は、チームミーティングと訪問支援に一日同行し、見学または可能な支援に参加した。訪問体験に関する参加者の記述を生データとして質的記述的研究を行った。結果と考察:リカバリーの構成要素に関する概念的理解と、今の精神科病院での日常的看護援助の限界への内省を含む4つのカテゴリーと7つのサブカテゴリーが抽出された。病院看護師は、ACTスタッフの訪問支援に同行する体験を得ることでリカバリー志向を高め、日常的看護援助にリカバリーの概念を浸透させる効果をもたらすと考える。 その他、リカバリーに関する教育を受けた看護系大学生82名を対象に日本語版Recovery Knowledge Inventory(RKI)尺度を用いた自記式質問紙調査を実施し、先行研究による精神科病院看護師のRKI得点との比較分析を行い、プログラム評価指標の活用についても再検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
研修プログラム改良の資料収集の段階で、ACTに同行訪問した体験の参加者の記述を質的記述的研究により再分析する必要が生じた。リカバリー概念や認知行動療法的アプローチを活用するACTチーム等専門家からのスーパーバイズを丹念に受け、分析を進めるために時間を要したため、当初計画より遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
病院看護師のリカバリー志向を高めるための改良版研修プログラムの構造化が完了したため、今年度よりプログラム参加者を募集していく段階である。8月よりプログラムを開始し、H30年度に評価の段階に入る計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
ACTに同行訪問した病院看護師による体験に関する質的記述的研究の成果発表と、病院看護師を対象としたリカバリー志向を高める研修プログラムの開始に係る諸費用を29年度に繰り越したため。
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次年度使用額の使用計画 |
ACTに同行訪問した病院看護師による体験に関する質的記述的研究の成果発表のための学会参加、情報収集等の旅費。研修プログラムの実施に際し、研修企画・運営(講師依頼、会場費、参加者募集の通信費、見学実習費等)、評価(統計ソフト購入、ACTチーム等専門家への意見収集とスーパーバイズ等にかかる交通費)に使用する計画である。
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