研究課題/領域番号 |
15K11793
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研究機関 | 宮城大学 |
研究代表者 |
大熊 恵子 宮城大学, 看護学部, 准教授 (40284715)
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研究分担者 |
吉田 俊子 宮城大学, 看護学部, 教授 (60325933)
高橋 恵子 聖路加国際大学, 看護学部, 准教授 (90299991)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 自治体職員 / 東日本大震災 / サポートグループ / メンタルヘルス |
研究実績の概要 |
平成27年度は、被災地域の自治体職員が抱えているストレスや疲弊状態の程度について明らかにするため、自治体職員のメンタルヘルスに関する文献検討、自治体職員への健康相談などから情報収集、分析を行い、その結果を第20回聖路加看護学会学術大会にて口頭発表を行った。また、日本災害看護学会第17回年次大会の交流集会でも話題提供し、参加者とのディスカッションを行った。 その結果、被災地域の自治体職員のメンタルヘルス上の課題として、自身の思いや不満を伝えられる相手がいないこと、抑うつ状態を自覚しながらも通常勤務をこなしていること、メンタルヘルス上の問題を感じても受診行動に結びついていないことが明らかになった。また、このような課題を抱えているのは、主に壮年期男性であることも見えてきた。よって、壮年期男性を対象としたソーシャルサポートを強化するためのサポートグループを構築する必要性が示唆された。 その上で、分担研究者やすでにサポートグループを立ち上げた経験のある有識者との研究会議を行い、プログラム内容やグループ参加のための仕掛けづくりに関する検討を行った。男性はサポートグループのような集団の場や人と話す場には参加しない傾向があるため、参加しやすい場にするには、血圧測定、体脂肪・骨密度測定などの健康チェックの場を作ること、また、男性のみを対象とするのではなく、家族全体を対象とするといった工夫が必要であるとの助言を受けた。今後は、壮年期男性の自治体職員の健康に関するニーズやどのようなグループであれば参加しやすいと感じるのかについて、明らかにする必要性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度の研究課題は「1)被災地域の自治体職員が抱えているストレスや疲弊状態の程度について明らかにする。2)慢性的なストレスや疲労の原因や背景、きっかけについて分析する。3)慢性的なストレスや疲弊状態にある自治体職員のソーシャルサポートの程度について明らかにする」ことであった。文献検討、自治体職員への定期的な健康相談、学会発表によって、以下の状況が明らかになった。 1):ストレスや疲弊状態の程度については、個人差が大きいが、自身の思いや不満を話せる相手がおらず、高いストレスや疲労を抱えている職員も散見された。中には、抑うつ状態を自覚しながらも通常勤務をこなしており、周囲にはストレスを見せないようにしている者やメンタルヘルス上の問題を感じても受診行動に結びついていない者もいることが明らかになった。また、女性よりも男性が自分のストレスや悩みを表出できない傾向があることも見えてきた。 2):慢性的なストレスや疲労の原因や背景、きっかけについては、東日本大震災の影響が大きいが、その後の経過の中で、地域住民からの苦情対応や家族の人間関係がうまくいかなくなったことによるストレスや疲弊が背景にある場合もあり、複雑な要因が絡み合っている現状が浮かび上がった。 3):ソーシャルサポートの程度についても1)同様、個人差が大きいが、壮年期男性が思いやストレス、悩みを他者に表出できず、ソーシャルサポートを得られにくい傾向が見られた。特に自治体職員の場合、地域住民全員が辛い思いをしているという思いから、自身の悩みを誰にも相談できない孤独な状況に置かれている可能性も示唆された。よって、このような職員に対するソーシャルサポートを強化するための支援が必要であることが明らかになった。 これらの進捗状況から、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度の研究課題として、「慢性的なストレスや疲弊状態にある自治体職員に対するサポートグループプログラムを策定する」こととする。 自治体職員に対して慢性的なストレスや疲弊状態、ソーシャルサポートの現状やニーズ、その内容に関するインタビュー調査を行い、質的記述的に分析する。その結果をもとにサポートグループプログラムの内容を検討する。また、プログラム参加者の条件についてもさらに検討する。プログラムはサポートグループの専門家にスーパーバイズを受け、内容を洗練する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度の研究計画では、自治体職員へのインタビュー調査(疲労度、ストレス度、ソーシャルサポートの有無)を行う予定であったが、協力者を選出するための時間が必要となり、年度内のインタビュー調査に至らなかった。そのために次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度は、被災地に出向き、自治体職員へのインタビュー調査と対象者のリクルートを行い、そのニーズに応じたサポートグループプログラムについて検討する。
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