研究課題/領域番号 |
15K11798
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
松下 年子 横浜市立大学, 医学部, 教授 (50383112)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 首尾一貫感覚向上プログラム / 首尾一貫感覚(SOC) / 看護管理者 / 看護専門職における自律性 / 看護管理者コンピテンシー / 縦断的介入研究 / コンサルテーション事例検討 / 看護管理者研修会 |
研究実績の概要 |
関東圏8施設、九州圏1施設の計9件の中・大規模病院の看護管理者、計180を対象に、「改訂版首尾一貫感覚(SOC: sense of coherence)向上プログラム」を実施した。1施設ごと、90分ないし120分のSOC研修会を年3-4回実施した。各回ではSOC、ストレスコーピング、感情コントロール等に関する講義と、事例を用いたコンサルテーションのグループワークを行った。なお、研修前と後に、SOC評価尺度(山崎,1999)、看護専門職における自律性測定尺度(菊池,1999)、看護管理者のコンピテンシー評価尺度(本村,2013)、属性等を含む匿名式の質問紙調査を実施し、尺度得点の推移を検定した。また本プログラムの有用性を掌握するために、全研修会終了後4施設の看護部にてインタビュー調査を実施した。結果、対象者180名の職位は、看護師長が5割、副看護師長が3割であった。参加者の中で研修前後の質問紙が返信されたのは140名(男性16名、女性124名)であり、対象者の研修前後のSOC平均得点、自律性平均得点、コンピテンシー平均得点に有意な相違は認められなかった。しかし3尺度得点間にはすべての組合せで、正の相関が認められた(SOCが高いほど自律性とコンピテンシーは高かった)。さらに、インタビュー調査から得られた研修に対する意見としては「SOCを学ぶことで資源を探すことや、体験の意義づけ、予測性の重要性について理解できた」「師長同士で事例検討を行うことで、普段の交流では得られない学びが得られた」「日常の臨床の中でSOCを結びつけるにはもう少しトレーニングが必要かもしれない」「管理者にとってSOCの視点は参考になるし、管理者以外にも学んでほしい」「SOCの概念が抽象的で、理解しづらい点もあった」等があった。毎回の研修会は意図したとおりに終了し、参加者からはおおむね良い評価を得たと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
協力病院看護部及び看護管理者の同意を得て、順調に首尾一貫感覚向上プログラムを実施することができた。毎回の講義とコンサルテーション事例検討会についても、好評を得た。特に終了後のインタビュー調査では、本プログラムが斬新であり、新しい指標を持ってコンサルテーションすることの意義を了解した旨の感想を得ることができた。最後に、尺度を用いた質問紙調査の分析結果からも、関心深い所見を得ることができた。なお、対象者数を計画当初、500名としていたが実際は目減りしている。ただし、平成29年度も同プログラムを他の病院看護部で実施する予定である。それによって補うことが可能である。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度も同プログラムを他の病院看護部で実施することで、管理者に対するSOCプログラムの有用性をさらに検証することが可能である。当初の予定通り、看護管理者用SOC向上プログラムの意義と手順(フローチャート)等を記載したマニュアルと、必要教材についてパッケージ化して看護管理者養成機関及び病院看護部に配布する。学会発表等を通じてプログラムの周知を図る。
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次年度使用額が生じた理由 |
対象施設数及に対象者数が少なかったこと、実施場所として関東圏内施設が多かったことにより、交通費の出費が予定より少額で済んだ。
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次年度使用額の使用計画 |
プログラム継続と、プログラムのパッケージ化、PR等の費用として計画している。
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