研究実績の概要 |
本研究は、地域で暮らす統合失調症を有する人の睡眠と生活リズムの安定を図る援助のための基礎的研究である。睡眠と生活リズムとその保健行動の実態を把握するとともに、PRECEDE-PROCEED モデルを基に作成した仮説モデルにより保健行動と関連要因との関係を分析した。 3か月以上在宅生活を継続している18~64歳の男女を対象に、無記名自記式質問紙調査によってPRECEDE-PROCEED モデルの7要因及び基本属性を把握した。分析は、性別、年齢、主に過ごす場所、精神機能、最近3年間の入院の有無による群別比較と共分散構造分析及び重回帰分析による関連要因の探索を行った。 分析対象者は220名、45.3±10.3歳、男性125名(56.8%)、主に過ごす場所は職場16.2%、デイケア・作業所39.8%、自宅44.0%、GAF58.0±14.4、抗精神病薬量618±467mgであった。共分散構造分析の結果、要因は保健行動に、保健行動は健康に、健康はQOLに影響しており、仮説モデルが支持された(RMSEA=.054, CFI=.939)。睡眠と生活リズムの健康に関する6指標を従属変数とした重回帰分析では、睡眠と生活リズムに関する保健行動得点の標準化係数は0.33~0.51となり、GAF、抗精神病薬量及び他の変数よりりも大きな影響があることを示した。 睡眠と生活リズムの健康は保健行動から大きな影響を受けており、保健行動の実践は環境要因、強化要因、実現要因等から影響を受けていた。日中行く場所や役割、相談先、ソーシャルサポート等社会的環境を整えることの有効性、すなわち地域で生活する統合失調症をもつ人の睡眠と生活リズムに関する援助として非薬物的な援助が有効である可能性が示唆された。
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