研究課題
【研究目的】本研究は、認知症高齢者の残存機能として着眼したポジティブな情動を引き出す介入を実施し、Behavioral and psychological symptoms of dementia (BPSD)、情動、行動、日常生活との関連、および影響因子を明らかにして、BPSDに対する非薬物的介入を確立することを目的とした。【方法】BPSDが出現しており、精神科病院に入院しているアルツハイマー病と診断されている女性を対象とした。対象者の選択要件を、MMASE(Mini-Mental State Examination)23点以下、視覚・聴覚は年齢相応で問題はなく、会話が可能である方とし、本人と家族の同意を得て実施した。ポジティブな情動を引き出す介入として、本人が好む歌手の音楽動画を一緒に視聴し、音楽動画にまつわる思い出を話し合った。介入は入院している精神病院にて実施し、1回の介入につき30分程度とし、2か月の間に週に1回ずつ合計4回実施した。評価は、情動は研究者らが作成した笑顔スケールにて測定し、BPSDはNPI(日本語版Neuropsychiatric Inventory)を用いた。会話は同意を得て録音し、内容分析およびテキストマイニングにて分析した。【結果および考察】本研究は介入数が少ないまま、COVID-19の感染予防対策のために全ての介入を中止せざるを得なかった。実施できた対象者の結果は、MMSEとNPIにおいて有意な結果は得られていない。笑顔では、柔らかい表情~微笑みが最も多く、音楽動画に集中するとこの表情が多かった。会話内容では、介入を重ねるにつれ言語量が増加し、思い出の内容が具体的になっていった。これらの結果から、認知機能やBPSDに大きな変化はみられなかったが、言語への影響がみられる可能性が示唆された。今後も対象者数を増やし、介入を重ねていく必要がある。
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