研究課題/領域番号 |
15K11805
|
研究機関 | 神戸市看護大学 |
研究代表者 |
宇多 みどり 神戸市看護大学, 看護学部, 講師 (90552795)
|
研究分担者 |
加利川 真理 神戸市看護大学, 看護学部, 助教 (50612404)
片倉 直子 神戸市看護大学, 看護学部, 教授 (60400818)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 看護基礎教育 / 在宅看護実践力 / 卒業時到達目標 / 新卒訪問看護師 / 訪問看護 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、新卒訪問看護師に求められる能力から看護基礎教育での卒業時の到達目標を構築し、目標達成するためのシミュレーション教育教材の開発を行うものである。 平成27年度は、文献から在宅看護実践力に関する知識・技術を11領域73項目抽出し、質問紙調査票の作成(一次調査)と就業中の新卒訪問看護師(卒後3年以内)に対して、在宅看護実践の場で求められる能力についてのインタビューガイドを作成(二次調査)、研究機関の倫理審査委員会での承認を得た。 平成28年度は、一次・二次調査を実施し、以下のような結果を得た。 1.一次調査:平成28年5月から6月、A県内498ヶ所の訪問看護ステーションの管理者に対して、新卒看護師に求める在宅看護実践力(「とてもそう思う、まあそう思う、あまりそう思わない、全く思わない」の選択肢)や新卒看護師採用の関心等について調査した。結果、有効回答数168件(回収率33.7%)について分析した。就業中の新卒訪問看護師は、9件(5.4%)で、採用を積極的に考えている訪問看護ステーションは14件(8.3%)、状況によっては考えたい44件(26.2%)を含めると3割が関心を寄せていた。在宅看護実践力の選択肢を点数化した平均値の比較では、コミュニケーション(3.87±0.37)や利用者を尊重した対応(3.85±0.39)など看護職としての基本姿勢に関する項目が高く、公的負担制度の理解(2.68±0.72)や地域特性の診断(2.75±0.67)、地域の社会資源(2.84±0.67)という制度や地域看護に関する項目が低かった。 2.二次調査:平成28年12月から平成29年3月、現在就業中の新卒訪問看護師5名にインタビュー調査を実施し、その結果、清拭や入浴介助等の日常生活援ケア、採血や点滴等の医療的ケア、異常に気付くことができるようなアセスメント力等の内容が語られた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成28年度の研究実施計画では、「訪問看護師に求められる新卒看護師の在宅看護実践力に関する調査」を終えて、看護基礎教育における卒業時の在宅看護実践力の到達目標を構築し、関連科目の学習目標や教育内容、教育技法を検討する予定であった。しかし、「訪問看護師に求められる新卒看護師の在宅看護実践力に関する調査」の一次調査である質問紙調査票の回収率が低くかったために、回収締切日を延長し、調査協力の再依頼葉書の送付を行うなど回収率を高めるための攻略を行った。また、「訪問看護師に求められる新卒看護師の在宅看護実践力に関する調査」での二次調査である新卒訪問看護師へのインタビュー調査において、就業中である調査協力者とのインタビュー日程調整に時間を要した。 以上の結果から、データ収集に時間を要し、調査結果を分析し、基礎看護教育における卒業時の在宅看護実践力の到達目標を構築するまでには至っていない。しかし、分析を行うにあたって十分なデータを収集することができた。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策について、以下のように実施する。 1.現在、「訪問看護師に求められる新卒看護師の在宅看護実践力に関する調査」の報告書を作成し、研究協力者へ送付する準備を行っている。早急に報告書の発送を終え、先駆的に新卒訪問看護師を育成・教育している訪問看護ステーション管理者や新卒訪問看護師、その他、訪問看護に関連する方々の意見を聴取する。 2.平成29年8月までに、1の結果を含めて、研究分担者と協議し、看護基礎教育における在宅看護実践力の卒業時到達目標を検討する。 3.平成29年10月までに、学習目標および教育内容、教育技法について検討し、可能な範囲で、後期科目から順次実践し評価できるよう準備する。 4.並行して、クリニカルシミュレーションセンターへの研修会の参加やシミュレーション看護教育先駆者(クリニカルシミュレーションセンター)へ開発した教材(案)をデモンストレーションするなどの教材を練り上げ、改善する。 5.授業評価については、研究機関での倫理審査委員会での承認を得る。
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度、「訪問看護師に求められる新卒看護師の在宅看護実践力に関する調査」のデータ収集が遅れたことで、当初予定していた次段階の基礎看護教育における卒業時の在宅看護実践力の到達目標を構築するまでに至らなかった。結果、教材開発に関する費用、開発した教材の評価と教材の再考および学習目標や在宅看護実践力としての卒業時の到達目標についての再検討、研究報告書の作成など成果報告に関する費用として、次年度使用額を請求し使用する。
|
次年度使用額の使用計画 |
以下のように研究計画に基づき使用する。 1.教材の開発を行うための費用とする。具体的には、ストーリー型のシナリオの作成、具体的な教育技法の検討、人材(模擬療養者とその介護者役の地域住民ボランティアの調整)、機器(高機能シミュレーター)の購入と学習環境の整備に関する費用とする。2.1と並行して、教材を開発するために、授業担当者が関連する研修会へ参加するための費用や授業協力者(実習関連施設で希望のある臨床指導者)への研修会開催費用とする。3.教材の開発および実施・評価については、国内でのシミュレーション看護教育先駆者(クリニカルシミュレーションセンター等)での助言を得るための交通費用等とする。4.授業評価のためのデータ入力費用、授業協力者への謝礼、報告書作成等の費用とする。5.研究の成果について、順次、日本看護教育学会、日本在宅ケア学会等に論文発表予定であり、その費用に充てる。
|