研究実績の概要 |
研究目的は、精神障害者が地域生活を維持・促進できることをねらいに、研究責任者が開発した「自尊心回復グループ認知行動看護療法(以下、プログラム)の介入について医療経済学的側面から効果的であるかを評価することである。非ランダム化の並行群間比較デザインを予定していたが、介入群と対照群の特性とベースラインのアウトカム指標に差があったことから、1群事前・事後テストの研究デザインに変更した。 介入は教材に基づき、12回のセッションを週1回、5-6人の集団に対し実施した。アウトカム指標の臨床評価指標は、自尊心、認知、GAF、EQ5D5Lとし、医療経済学的指標は「患者が実際に支払った医療コスト」とした。 医療コストは、3カ月間毎の合計コストを算出し比較した。介入前3カ月間(A0)、介入終了後3カ月間(A1)、介入終了後4-6カ月間(A2)、介入終了後7-9カ月間(A3)に測定し、A0と比較した。他の指標は、介入前(T0)、介入中間点(T1)、介入終了直後(T2)、介入終了3月後(T3)に測定した。分析は線型混合モデル分析である。 地域で生活する28名の精神障害者に介入を行った結果、T2のEQ4D5LはT0より有意に高得点で中程度の効果量であった(p<.05,ES.51)。T1とT3は小の効果量があった(ES.37,.47)。T2とT3の自尊心は有意に高得点で効果量は中であった(p<.05,ES.64;p<.01,ES.71)。認知の「先読み」「べき思考」「深読み」「自己批判」「白黒思考」はT3で有意に低下し、中程度の効果量があった(p<,05,ES.5-.7)。GAFは、T2とT3で効果が認められた(p<.01,ES-.70;p<.001,ES-1.1)。A2とA3の医療コストは、A0より有意に低コストで中程度の効果量であった(p<.01,ES.63;p<.05,ES.55)。
|