【目的】看護師主導の自尊心回復グループ認知行動療法(CBGTRS)プログラムを従来治療に追加することが、自尊心をはじめとした臨床症状の改善および直接医療費(保険者視点)の削減に繋がるか検討することである。【方法】研究デザインは、単群前後試験である。対象者は、日本の地域で生活する51名の精神障害者である。介入は、「自分を好きになるためのワークブック」を用いた認知行動療法であり、週1回の頻度で計12回の集団セッションを実施した。主要評価項目は自尊心とし、副次評価項目はその他の臨床評価指標である気分、認知、QOL、機能、さらに直接医療費とした。臨床評価指標は、介入前(T0)、介入中間点(T1)、介入終了直後(T2)、介入終了3月後(T3)に測定した。直接医療費は、介入前3カ月間(A0)、介入終了後3カ月間(A1)、介入終了後4-6カ月間(A2)、介入終了後7-9カ月間(A3)の合計コストをそれぞれ算出した。分析は線型混合モデル分析とした。所属機関の倫理審査委員会の承認を得た後に実施した。【結果・考察】T2とT3の自尊心は有意に高得点で、T3は中(ES:-.51)、T2は小(ES:-.49)の効果量であった。気分の緊張-不安、抑うつ-落ち込み、疲労、活気はT3で有意に改善した。認知の全てのバイアス(先読み、べき思考、思い込み、深読み、自己批判、白黒思考)はT3で有意に低下し、QOLと機能も改善した。A2とA3の直接医療費 はA0より有意に低額で、下位項目の診療料金、処方箋料、通院精神療法料、病理検査料は減額した。自尊心と認知の回復、気分とQOLの改善により活気と機能が上昇し、直接医療費減少に繋がったと推察される。【結論】看護師主導のCBGTRSプログラムは、臨床症状の改善と直接医療費を削減する可能性をもつことが示唆された。
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