研究実績の概要 |
ハンセン病回復者は、「らい予防法」による隔離規定や消毒規定に基づく生活を行ってきた。そのことにより社会的な差別・偏見を生み出し、ハンセン病回復者自身がセルフ・スティグマを内面化するに至った。本研究目的は、ハンセン病回復者自身のセルフ・スティグマの生成過程を明らかにすることである。 研究方法は、関東圏から沖縄県在住のハンセン病回復者31名に①参与観察法(フィールドワーク),② エピソード・インタビュー,③資料収集の方法を用いたエスノグラフィーである.データ分析方法は,小田(2010),Angrosino(2016)のエスノグラフィー分析プロセスを参考に検討した. その結果、ハンセン病回復者が認識したセルフ・スティグマは,自身が「ハンセン病をうつす存在」「ハンセン病の『徴』としてのボディイメージの変化」「刻み込まれたハンセン病の病名」「家族に迷惑をかける存在」「自己存在の否定」であった.「ハンセン病をうつす存在」では,健常者との会食や子どもへの接触場面で,「うつらないと分かっていても接触を遠慮する」や,自らがうつすことを怖がり,「近寄らない」の行為の抑制があった. セルフ・スティグマの生成過程には,内面化の自己認識を示すエピソードとして, <差別されていると思い過ぎて,周りは気にしないのに,自分のなかに差別感がある>と語り,差別が身体化され,<うつらないのに子どもの時の教えによる日用品の共有や肌の接触を抑制する>状況が語られた.生成過程を分析すると,それは過去の偏見・差別の体験・経験に基づき,「怖い病気」として植え付け,「社会的スティグマ」を想起していた.そのことにより,「恐れるあまり」社会的スティグマが発生する状況で回避行動を取っていた.また、セルフ・スティグマの生成過程には3段階の循環が見いだされた。
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