研究課題/領域番号 |
15K11818
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研究機関 | 神奈川県立保健福祉大学 |
研究代表者 |
榊 恵子 神奈川県立保健福祉大学, 保健福祉学部, 教授 (90235135)
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研究分担者 |
北原 佳代 日本医療科学大学, 保健医療学部, 講師 (70389708) [辞退]
石野 徳子 昭和大学, 保健医療学部, 教授 (20407406)
高野 幸子 昭和大学, 保健医療学部, 講師 (00806359)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 精神看護学 / 教育実践 / ライフヒストリー |
研究実績の概要 |
1997年の精神看護学の科目独立に焦点を当て歴史研究として発表した。1990年の時点では、看護カリキュラムにおける学校の自由裁量、授業時間数削減、基礎看護学の充実に主眼が置かれ、精神看護学関連では精神保健の科目設置に留まったが、その後、看護系大学において科目として精神看護学が設置された事実や、いじめ、家庭内暴力、高齢社会などによる社会的ニーズが益々高まるなか、1997年に科目が独立した。しかし、精神科看護の臨床経験がある教員が不足している実情があった。
データ分析を積み重ねるなかで、教員のライフストーリーは、自分自身が身体障害を負った痛み、精神障害者のどん底の家族体験や家族の被害者体験など、研究参加者個人の人生上の大きな出来事との関連で構築されていることが明らかになった。こうした研究参加者はもともと自分自身を問う動機があってこそ、精神看護学の教員を選択してきたと推測された。学生への講義や実習指導を通して、自己の体験を学生に投影し思いを託し、教育活動のなかで自分自身のストーリーを何度も再構築しているのではないだろうか。
精神看護学の臨床経験のない教員は、精神看護学独立を時代に流れの一端として受けとめ、事前研修や実習指導に前向きな向き合い方で臨み、精神看護学の教員としての役割を果たし、満足感や達成感を得ていた。一方で、上にも述べた過去の自己の傷つき体験につながって教員を選択してきた教員のなかには、自分自身の当事者性から学生に投げかけ、意図的に自己のライフストーリーを活用しているものもいた。日々の教育実践活動のなかでは、教員自身のストーリーを語り交換する機会は少ないが、教育実践能力の向上のためには、自分自身について語る場を設けたり、あるいはそうした場への参加を促したりすることによって、自己体験と教育体験のつながりに、より自覚的になるように促進していくことが大切である。
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