本年度は「精神科看護師の倫理的感受性を高めるためのナラティヴ・エシックスに基づく倫理教育プログラム」の試案を実施し、効果を検証した。また、全ての領域の看護師を対象に、日本看護倫理学会第11回年次大会のワークショップにて本プログラムを実施した。 本プログラムは、1クール3回(1回3時間)を2クール行い、計33名の精神科看護師が参加した。内容は①ナラティヴ・エシックスの解説、②研究者らが収集・分析した精神看護の倫理的ナラティヴのモデル事例の紹介、③独自のガイドを用いたグループワークとした。 毎回アンケート調査を実施し、99%の参加者がナラティヴ・エシックスによる事例検討はよかった・とてもよかったと回答した。自由記載では【自分の経験が想起される】【他者と語ることで考えの幅が広がる】【自分が抱いていた感覚が保証される】【現場で取り組む勇気をもらう】等の体験がなされたことが明らかになった。 また、参加者のうち過去3年以内に精神科病棟で勤務経験のある対象者(N=25名)にプログラム前後で「精神科看護師が体験する倫理的問題の頻度と悩む程度(FEEP43)」「道徳的感受性質問紙日本語版(J-MSQ2017)」を用いて効果測定を行った結果、プログラム前後でFEEP43の合計の平均得点は、倫理的問題に出会う頻度・悩む程度ともに有意差は認められなかった。J-MSQ2017は「患者がよいケアを受けていないと気づく能力が私はとても高いと思う」の項目がプログラム後に有意に高くなっていた。 さらに、日本看護倫理学会第11回年次大会のワークショップで本プログラムを実施した。参加者は50名であり、感想では「一般病棟でも出会う事例で、普段は自分の中に押し込めていた感覚が刺激された」「語ることで看護を見つめる作業になり、倫理的な気づきが得られた」等が挙げられ、精神科以外の看護師にも適用できる可能性が示唆された。
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