研究課題/領域番号 |
15K11827
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研究機関 | 聖隷クリストファー大学 |
研究代表者 |
小平 朋江 聖隷クリストファー大学, 看護学部, 准教授 (50259298)
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研究分担者 |
伊藤 武彦 和光大学, 現代人間学部, 教授 (60176344)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 精神看護学 / 統合失調症 / 闘病記 / 当事者研究 / テキストマイニング / リカバリー / ナラティブ教材 / 伝記分析 |
研究実績の概要 |
平成27・28年度は、当事者本人が執筆の闘病記や当事者研究(浦河べてるの家や向谷地生良氏の執筆)関連の出版物の分析を次のように計画した。(1)分析対象とする闘病記の選択、(2)データの電子化とコーパスの作成、(3)テキストマイニングによる量的分析、(4)原文参照によるテーマ(主題)分析・伝記分析による質的分析、(5)回復の語りを公開している浦河べてるの家の当事者研究で資料収集、(6)看護学・心理学関連の国内外の学会発表 向谷地生良(2015)『精神障害と教会:教会が教会であるために』の分析で日本看護科学学会の発表を終え、当事者研究を考察する上で、浦河べてるの家が誕生した時代の古い出版物を分析対象とする必要が分かり、その書籍2冊を入手し電子化を終えた。浦河べてるの家の当事者研究に関する分析結果は、国際心理学会(ICP2016)と世界ヒューマンケアリング学会で発表した。また、『心理科学』に投稿した論文の採択が決まっている。 以前から注目してきた当事者の体験を豊富に掲載するNPO法人コンボ出版の雑誌『こころの元気+』が創刊10周年を迎えた。本雑誌は当事者が表紙モデルで、その経緯を記す記事「私モデルになっちゃいました!」が連載される。創刊2007年3月号から2015年7月号の9年間に渡り、連載の100記事を収集してデータの電子化を行い、テキストマイニング分析に取り組み、日本統合失調症学会と日本発達心理学会で発表した。本分析では、記述内容の質的な分析と原文参照によるテーマ(主題)分析に取り組んだ結果も報告に含めた。この研究成果の一部の紹介を、『こころの元気+』2017年3月号に執筆し発刊された。 昨年度からの研究成果を踏まえ、計画(1)(2)の内容を充実させつつ、(3)(4)(5)(6)に関連の研究成果を報告することで、本研究成果を社会や国民に発信できたといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当事者研究に関する分析結果は、国際心理学会(ICP2016)と世界ヒューマンケアリング学会で発表した。そして、『心理科学』に投稿した論文の採択が決まっている。日本看護科学学会の発表を終え、長年に渡り、浦河べてるの家の支援者である向谷地生良(2015)『精神障害と教会:教会が教会であるために』の分析からは示唆に富む成果が得られ、浦河べてるの家が誕生した時代の古い出版物を分析対象とする必要が分かった。北海道浦河町で行われる「べてるまつり」に参加し、当事者・家族・支援者と貴重な交流があり、浦河べてるの家の歴史に学びつつ、幸いにも浦河べてるの家に関連の古い出版物を入手することができた。 『こころの元気+』の9年間連載の「私モデルになっちゃいました!」100記事のテキストマイニング分析は日本統合失調症学会(当事者・家族も参加できる)と日本発達心理学会で発表した。この研究成果の一部の紹介を、『こころの元気+』2017年3月号に執筆した。本誌では、リカバリーした人の気持ちとリカバリーを支えるために必要な情報や知識に焦点を当てて報告した。本報告は支援者にとっては、当事者のリカバリーを支えるためのヒントが得られると考える。そして看護大学生に対しては、本報告を精神看護学の講義や実習での教育的活用のためにナラティブ教材としての提供を行った。この2017年3月号は、創刊10周年記念号で、3月下旬に毎日新聞(3/27朝刊)ほか山陰中央新報(3/23朝刊)などの地方紙で紹介された。『こころの元気+』は当事者向けの情報誌であり、研究成果を広く当事者と共有することができたと考える。 今年度得られた研究成果は、当事者視点でのリカバリー(回復)を捉える上で、リカバリーのプロセスが重要であるという点など大きな示唆が得られ、本研究課題を進展させる上では、大変、意義深いものであったと考える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の分析対象は、統合失調症当事者により執筆されたものや当事者研究であることから、電子化するデータの選択は合目的的サンプリングの方法によりおこなっている。今後も、公開された当事者研究の語りの場である、浦河べてるの家の当事者研究の会や「べてるまつり」などに参加し、その場に居合わせることで、当事者や家族の主観的な体験を大事にしたリカバリー(回復)の視点を重視しながら、研究を推進できると考えている。 また、浦河べてるの家やNPO法人コンボは、インターネットや出版物、学会のシンポジウムや交流集会など、多様な方法と場で情報発信をしているため、分担研究者と協力して情報収集を続けていく。 平成29年度も同様の計画で研究を推進していくにあたり、闘病記などの出版物の効率的な電子データ化の工夫が必要である。そのために、分担研究者との打ち合わせにより、方針を定めて、研究を推進していく。そして、看護学・心理学関連の国内外の学会での発表、および投稿論文作成に取り組んでいく。
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備考 |
(2)のサイトでは、Papersのページで論文を紹介した。Conferenceのページで学会発表を紹介した。
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