研究課題/領域番号 |
15K11833
|
研究機関 | 天理医療大学 |
研究代表者 |
岡本 響子 天理医療大学, 医療学部, 教授 (60517796)
|
研究分担者 |
松浦 美晴 山陽学園大学, 総合人間学部, 准教授 (00330647)
中川 晶 奈良学園大学, 保健医療学部, 教授 (10207722)
高橋 里沙 天理医療大学, 医療学部, 助教 (90596206)
上山 千恵子 天理医療大学, 医療学部, 助手 (90751587)
高橋 晶 天理医療大学, 医療学部, 助教 (40619780)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 長期ひきこもり / 高齢の親 / 支援 |
研究実績の概要 |
平成28年度は平成27年度中にヒアリングを行った訪問看護師のインタビューデータをまとめた。聴取内容を逐語化し、テキストマイニングを用いてデータ全体の把握を行うとともに、内容分析の手法を用いて質的に分析した。分析の結果、訪問看護師は親に対する日常生活援助の他に、子である引きこもり当事者に対する心配毎の相談にのったり、近隣住民との関係性の援助を含む対人関係の維持・構築や、社会資源の活用のためのケアを行うなど、支援のため奔走している実態が明らかになった。一方で、支援は訪問看護師の力量に任せられていることも明らかになった。すなわち、自分たちはあくまで親の支援のために訪問しているわけで、引きこもり当事者への支援は自分たちの仕事の枠外であると考える看護師もいれば、家族全体をアセスメントし支援の対象としなければ、親の支援につながらないと考える看護師もいた。しかし、いずれの場合であっても、当事者が、最初は戸惑い、時に混乱しつつも、親の支援を受けるために長期間にわたって閉じ続けた門戸を開き、外部の人を受け入れるようになっていくプロセスや、社会とのつながりを戻しかけたり、支援者に支えられて介護者として成長していく実態が示された。また、親は自身の健康不安や経済的不安等に加え、我が子の将来に対して経済的、心理的不安を抱いているが、子の問題を家族の問題と考えており、自分がなんとかしなければいけないと苦慮している姿も浮き彫りになった。そしてようやく開かれた門戸が親への訪問終了とともに閉じられてしまう問題点も浮き彫りになった。 平成28年度の成果については2件の学会発表と1件の論文投稿と採択・掲載決定がなされている。また29年度現在1本の学会発表に申し込み中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究では長期ひきこもり当事者の高齢の親が主な研究対象となる。適切なインタビューのためには対象者との信頼関係構築が重要である。しかし、親自身も社会的に孤立する傾向があり、ラポール形成のために多くの時間を有している。そのために研究に遅れが生じている。また、分担研究者が出産や育児のため研究に携われない時間が生じたことも理由にあげられる。
|
今後の研究の推進方策 |
平成28年度までの調査を通して、高齢の親が置かれている実態や課題が挙がってきた。しかしこれらはあくまでも訪問看護師へのインタビューを通しての調査であって、現実の親の意見が反映されているわけではない。そこで、次の段階として、親自身へのインタビューを実施していく。現在倫理申請をしておりそれが通り次第調査開始予定である。インタビューは精神科受診歴があるひきこもり当事者の親と受診歴がないひきこもり当事者の親に対して実施する。協力者は地域の親の会や、精神科病院の家族会を通して得られる見込みである。インタビュー項目として、現在受けている支援、家族状況・在宅状況について、ひきこもり当事者との暮らしの実際や心配ごと、子との緊張の緩和について、支援に対する要望・不満、他の関係者に相談しているかなどを、ひきこもり当事者の生活歴を頭に浮かべながら話してもらうようにする予定である。これまでの研究から親の背景には、隠したいけどかわいい子といった複雑な感情があることがわかっている。こういった気持ちに十分配慮しながらインタビューをすすめていくため、スーパーバイザーとして共同研究者の精神科医師に協力を得る。
|
次年度使用額が生じた理由 |
昨年度予定していた長期ひきこもり当事者の高齢の親へのインタビューが遅れている。本年度の実施のために必要である。また研究成果報告や及び学会発表のために資金が必要である
|
次年度使用額の使用計画 |
長期ひきこもり当事者の高齢の親へのインタビューの実施と結果の分析、研究成果報告や学会発表等のため使用予定である
|