研究課題
本研究の目的は、ひきこもり者の高齢の親が抱える問題の抽出と支援について明らかにすることである。本研究では、精神障害の診断を受けているひきこもり当事者と暮らす高齢の親(以下、診断を受けている当事者の親)20名、診断を受けていないひきこもり当事者と暮らす高齢の親(診断を受けていない当事者の親)16名に対してインタビューを行い、結果を質的に分析した。診断を受けている親が直面する困難や問題点・課題からは「我が子は未だに回復への見通しが立たない」「社会で支えるシステムが不足している」「経済的に生活維持が困難だ」など11カテゴリが抽出された。診断を受けていない親が直面する困難や問題点・課題からは「先の見えない苦しみが続き追い詰められている」「医療に頼りたいが信頼できない」など17カテゴリが抽出された。両方の親に共通するカテゴリとして「家族全体が病んでいる」「我が子の世話ができなくなっている」「支援に頼るのは気が引ける」など8カテゴリが示された。訪問看護師18名へのインタビューからは「親は当事者の存在を隠したがる」「家庭内の緊張が高い」「当事者自身の意思決定能力の問題」「当事者支援は訪問看護師の判断次第」など14カテゴリが抽出された。高齢の親と子は、支援者の介入がない状況が長期化し、症状が凝り固まった状態で生活していること、家族全体が病み、経済的にも追い詰められた中で生活を営んでいることなどが明らかとなった。このような問題を抱える家に訪問する看護師は唯一社会との接点となれる。しかし、劣悪な生活環境や当事者とのコミュニケーション困難、高い家庭内の緊張といった問題に直面する中で、看護師自身にも、ネガティブな感情が芽生えることがわかった。さらに制度の限界として、当事者支援は看護師の判断に委ねられており、親亡きあとは訪問看護が入らないため当事者への支援の窓口もなくなる問題があることがわかった。
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第49回日本看護学会論文集慢性期看護
巻: 49 ページ: 279-282