研究課題/領域番号 |
15K11839
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研究機関 | 公益財団法人東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
新村 順子 公益財団法人東京都医学総合研究所, 精神行動医学研究分野, 主任研究員 (90360700)
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研究分担者 |
中西 三春 公益財団法人東京都医学総合研究所, 精神行動医学研究分野, 主席研究員 (40502315) [辞退]
田上 美千佳 東京医科歯科大学, 大学院保健衛生学研究科, 教授 (70227247)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 精神障害者 / Shared Decision Making / アドヴォケイト / ピアスタッフ / リカバリー |
研究実績の概要 |
今年度は、精神保健領域における病院から地域への移行期支援および、SDMについての文献検討を中心に実施し、以下のことが明らかになった。 <移行期支援におけるSDMの重要性>移行期支援は、再入院や再発の防止、ケアの継続性に効果がある(Vigot et al. 2013)。中でもユーザーと支援専門職との信頼関係の構築服薬や治療へのアドヒアランスは重要であり、移行期支援の中核には、ユーザーと支援専門職が対等な立場で対話を行い、当事者の気持ちや選択を尊重し、治療や支援方法の決定を行うプロセスである、意思決定の共有(SDM)を置くことが不可欠である。 <SDMの定義およびプロセス> Charles (1999)は、SDMの特徴として、①意思決定のプロセス全てについて医師と患者が共有する②医師と患者の2方向で情報の交換が行われる③医師と患者の両者が方針に対する自分の好みを表明する④検討の結果に対して両者が合意している、を挙げている。 <精神科領域でのSDMの研究>RCTによる効果研究では、ユーザーのサービス満足度、薬物治療に対する知識、社会的スキルの向上等が確認されているが、臨床評価の有意差は確認されていない(Malm et al. 2003; Hamann et al. 2006; Westermann et al 2013 ; Loh et al . 2007)。 一方、SDMは、理念は受け入れられるが、実践は難しいといわれており、フォーカスグループや、レビューを用いて実践に向けての障壁や促進要因を明らかにした研究からは、ユーザーとスタッフ両者のSDMやリカバリーに対する認識などが強く影響しており、ユーザーとスタッフ両者に向けての教育的な働きかけが必要である(Mahone et al . 2011; Farrelly et al. 2015;Bee et al .2014)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
精神保健領域におけるSDM研究においては、支援専門職だけでなく、ユーザーやケアラーからの協力や評価を得ながら実施していくことが求められ、ユーザーのリクルートなど研究体制の構築に時間をかける必要性があると考えたため。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、ユーザーの協力を得て、フォーカスグループおよび個別のインタビューガイドや進め方の検討を行ったうえで、看護職を中心とした支援専門職、ユーザー、ケアラーへのフォーカスグループ、必要に応じて個別のインタビューを実施する。 また、国内・海外でのSDMの先進事例について、積極的に情報収取を行うこととする。
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次年度使用額が生じた理由 |
精神保健領域のSDMについての研究の実施にあたっては、支援専門職だけではなく、ユーザーやケアラーと意見交換や評価を得ながら研究を進めていく必要性があり、協力の得られるユーザーのリクルートなど研究体制の構築に時間をかけることが求められたため、今年度はフォーカスグループやインタビューの実施に至ることができなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、支援専門職、ユーザー、ケアラーへのフォーカスグループおよびインタビューの実施を行うため、参加者への謝礼や、逐語録の作成、また、先進事例の情報収取のための費用が発生する予定である。
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