研究課題/領域番号 |
15K11852
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
與古田 孝夫 琉球大学, 医学部, 教授 (80220557)
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研究分担者 |
古謝 安子 琉球大学, 医学部, 教授 (30305198)
豊里 竹彦 琉球大学, 医学部, 教授 (40452958)
高原 美鈴 琉球大学, 医学部, 助教 (60522191)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 死生観 / 介護・看取り意識 / 生きがい感 / 地域愛着 / ソーシャルキャピタル |
研究実績の概要 |
今年度は、1)地域の祖先崇拝を基盤とした伝統的行事や祭祀が高齢者の死生観に及ぼす影響を明らかにする、2)ソーシャルキャピタルやソーシャルサポートの授受,地域愛着など,地域への信頼や相互扶助,地域への愛着意識が死生観に及ぼす影響を明らかにする、3)上記1),2)を基盤に形成されることが考えられる死生観が介護・看取り意識および生きがい感などの高齢者の終末観やQOLなどの心理・社会的要因に及ぼす影響を明らかにする、4)過疎地域と北部市街地域との比較検討をとおして,死生観が介護・看取り意識および生きがい感などに及ぼす影響要因の特徴を明らかにすることを目的に調査を継続中である。 具体的には、沖縄県国頭村において「沖縄県第11次へき地保健医療計画」における北部地域のへき地地域対象地区である11地区を含む、全20地区の65歳以上地域高齢者,約1400人の全数調査実施している。また、北部過疎地域と北部市街地域との比較検討をとおして,死生観が介護・看取り意識および生きがい感などに及ぼす影響要因の特徴を明らかにすることを目的に、名護市において最も人口規模の大きい宮里地区の65歳以上地域高齢者,約880人を対象とした調査実施を予定している。 これまで沖縄県北部過疎地域高齢者を対象に死生観と介護・看取り意識や生きがい感に関する疫学的研究は全くなされていない。本調査により,伝統的地域特性が維持・継承されている沖縄県北部のへき地地域を含む過疎地域在住高齢者の死生観および介護・看取り意識や生きがい感などの心理・社会的要因との関連を明らかにすることにより,地域での看取りをも包含した高齢者のQOLの維持・向上,より良い地域ケアの構築に向けた示唆の得られることが期待できる。さらに,北部地域の市街地居住高齢者との比較検討をとおして,環境の異なる地域に立脚した地域密着型の地域力や地域扶養能力の向上に向けた地域サポートに資することが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
沖縄県国頭村における、北部地域のへき地地域対象地区である11地区を含む、全20地区の65歳以上地域高齢者を対象とした約1400人の全数調査は順調に遂行されており、おおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
超高齢社会を迎えた現在、地域においては高齢者自身が積極的に相互交流し、主体的な介護生活を選択できる地域社会を創造する必要がある。そのためには、高齢者への介護サービス提供が住民の生活を維持発展させ得るような持続可能な循環サイクル(地域力)の醸成が必要不可欠であり、家族に依存しない地域社会の扶養能力の向上が期待される。住み慣れた地域で暮らす、地域で終末期を過ごすことを可能にする地域力とは、どのように形成されていくのか。地域社会の地域力と扶養能力向上は、過疎地域のみの問題ではなく、人口減少高齢社会にむかう我が国全体の吃緊の重要な課題であると考える。さらに、近年の沖縄における糖尿病、高血圧、心疾患などの疾病障害の急増やうつ病などの精神疾患に伴う自殺など、健康長寿の存続が危惧される現状は、地域密着型の包括的な地域力の構築の必要性と課題を示していると考える。このような現状のなか、地域密着型の地域包括ケア体制構築の取組みは、高齢者の介護や看取りのみならず、地域の連携・協働を高め、地域力の強化および活性化につながり、地域貢献への大きな成果となることが期待できる。 以上のことを踏まえ、今後は沖縄の地域固有の伝統型地域力(地域愛着、ソーシャルキャピタル)が住み慣れた地域で暮らし、終末期を迎えることを可能にする地域力の構成モデル構築の可能性について検討することを目的に、以下の観点から検討を行う。1)性別,年齢,学歴,経済状況や宗教の有無などの基本属性、2)祖先崇拝や地域行事への参加状況、3)生活習慣や健康状況、4)家族・親族や地域住民との交流状況、5)ソーシャルサポートおよびソーシャルキャピタルや地域愛着の測定、6)生活満足感や生きがい感の測定、7)過去の看取り経験の有無、8)高齢者観や介護不安,延命治療への認識、9)死生観の測定 等
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次年度使用額が生じた理由 |
現在、本調査は遂行途上にあり、調査謝金、データ入力、報告書作成にかかる雇上費等の使用額が次年度予算に積算されたことにより、次年度使用額が派生した。次年度にかかる使用額を勘案すると、予算は着実に執行可能であると考える。
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次年度使用額の使用計画 |
上記をふまえ、次年度使用額に組込み予算執行を行う。
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