研究課題/領域番号 |
15K11855
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
廣川 聖子 首都大学東京, 人間健康科学研究科, 准教授 (70331486)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 自殺 / 自殺予防 / 自傷 / 自殺未遂 / 訪問看護 / 訪問支援 |
研究実績の概要 |
本研究は,Joinerらの提唱する「自殺の対人関係理論」において対人関係の文脈から自殺の背景要因として分類されている『自殺の潜在能力』『所属感の減弱』『負担感の知覚』を枠組みとして活用した,自殺関連行動の既往がある精神科訪問看護利用者への効果的な支援プログラムを開発することを目指している。 平成27年度は,先述の3要因について評価するアセスメントツールの作成に向け,文献検討,過去の調査結果の再分析,ならびに有識者への聞き取りを行った。 各要因の構成要素を項目として使用できるよう,『自殺の潜在能力』に関しては,対象の特性・行動傾向を表す「自殺関連行動の経験」「自殺の家族歴」「被虐待経験」等,それまでの生活の中で獲得された身体的疼痛に対する鈍感さ・耐性,自殺に対する恐怖心の乏しさ,意識・無意識的に死を志向する傾向等を把握できるような項目について検討した。『所属感の減弱』に関しては,「孤独感」「孤立感」「疎外感」「対人サポート」「喪失体験」等,『負担感の知覚』に関しては「無価値観」「自己効力感」「自己肯定感」等,関連すると考えられる概念について抽出し検討を行った。 平成28年度は,27年度の検討内容を基にアセスメント項目を精錬し,アセスメントツールを作成する。3要因について正確に評価することにより,各対象のどの点に焦点をあてた支援が必要であり効果的であるかを判断することが可能となると考えられる。 また,作成したアセスメントツールを実際に使用し,プログラム介入前の精神科訪問看護利用者における自殺リスクについて測定する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では,平成27年度は『自殺の潜在能力』『所属感の減弱』『負担感の知覚』を指標とした自殺リスクのアセスメントツールを作成し,さらにはそのツールを用いたプレテストの実施を目指していたが,アセスメントツール作成ならびにテスト実施には至らなかった。 進行がやや遅れている理由としては,研究者の所属の変更によりエフォートが変化したこと,文献検索・検討への時間を多く費やしたこと等により研究への着手・運営が遅れたことが挙げられる。特に『所属感』『負担感』については構成・関連概念ならびにそれらに関する尺度等も多く,また日本特有のニュアンスの包含についても検討する必要があることから,当初の予定よりも文献の分析が必要であった。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画では,平成28年度は, 1.アセスメントツールを用いた精神科訪問看護利用者の自殺リスクのベースライン調査(事例・対照),ならびに 2.自傷・自殺未遂歴がある精神科訪問看護利用者への支援プログラムの開発 を予定していた。これについて,計画遂行のタイムスケジュールを修正し,平成28年度はアセスメント項目の精錬およびアセスメントツールの作成を行い,並行して支援プログラムの検討・開発を進め,平成29年度に実施予定の研究協力看護師への研修実施の頃までにベースライン調査が実施できるよう,平成28年度内のプレテストの実施・評価を目指すものとする。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度の研究実施内容について,研究者の所属の変更に伴いエフォートに変化があったことや,文献検討含めた情報収集および関連概念等の整理に費やす時間が当初の予定より多く必要であったことなどから,アセスメントツールの作成ならびにプレテストの実施にまで至らず,予定より少ない執行額となった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度はアセスメントツールを作成し,それらを用いて実際にプレテストも実施することから,アセスメントツール作成にあたっての専門家へのスーパーバイズ,プレテストに伴う通信費や人件費,研究協力事業所への謝金等に使用する予定である。
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