研究実績の概要 |
本研究はJoinerらの提唱する「自殺の対人関係理論」において,対人関係の文脈からみた自殺の背景要因として分類されている「自殺の潜在能力」「所属感の減弱」「負担感の知覚」を枠組みとして応用した支援プログラムを開発し,自傷・自殺企図歴がある精神科患者への訪問看護の場において自殺予防に活用することを目指して実施した。 2017年度には,調査会社にモニター登録している20歳以上の男女30,000人を対象にスクリーニング調査(対人関係欲求質問票:INQ)を行い,INQスコア上位10%である1,788人に研究班が作成した視聴覚教材を用いた本調査を実施した(いずれもオンライン調査)。本調査は,動画視聴とワークを組み合わせた調査であるが,その動画・ワークは対人関係の文脈から回答者のエンパワメントを促す内容であり,介入の前後でINQの他,ベック絶望感尺度( BHS),自殺潜在能力尺度(ACSS),精神的健康尺度(K6)を測定し比較した結果,ACSS以外の尺度で有意差が認められた。 2019年度は,2017年度の調査の結果をふまえ,オンライン調査で実施したプログラムを精神科訪問看護利用者に実施した。都内の訪問看護ステーション6施設に協力を得て,20歳以上の利用者のうち,過去5年内に何らかの自殺関連行動(自殺念慮,自殺の計画,自殺企図)の経験がある者を対象としたが,主治医に介入調査の了解を得ることが困難であり,実際の対象数は6名であった。プログラム実施の結果,今回対象となった6名においては前後で得点が低下したものの,有意差は認められなかった。
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