研究課題/領域番号 |
15K11857
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研究機関 | 神戸市看護大学 |
研究代表者 |
相原 洋子 神戸市看護大学, 看護学部, 准教授 (90453414)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | マイノリティ高齢者 / ヘルスリテラシー / 地域支援 |
研究実績の概要 |
本研究は日本に定住する外国籍出身あるいはその子孫で、65歳以上高齢者のヘルスリテラシー向上にむけた地域支援プログラムを開発することを目的としている。平成27年度の研究目標は、言語的マイノリティ高齢者のヘルスリテラシーの特性を把握し、社会支援やソーシャルキャピタルの関連を、混合分析の手法を用いて明らかにすることである。 定住外国人の高齢化率が16.5%の神戸市をフィールドとし、コリア1世、2世:15人、ベトナム:10人、中国、中国帰国者1世、2世:15人に対し、半構造化質問紙を用いた個人面接を行ない、データを収集した。定量データは記述統計ならびに単変量解析を用いて、ヘルスリテラシーの特性と関連要因を分析した。健康維持への自信、医療者とのコミュニケーション、健康情報の好みについては、自由回答を得てテキストデータをコード分類した。日本人のヘルスリテラシーの比較については、研究代表者が平成21、22年度に実施した調査結果(科研若手B)を用いた。 分析の結果、中国高齢者にヘルスリテラシーが高い傾向がみられ、中でも批判的ヘルスリテラシーは、統計学的有意に高かった。中国高齢者は、健康情報の媒体ソースが多く、日本高齢者と類似した結果が出た。また医療者とのコミュニケーションは、漢字を筆記することで可能であることも、ヘルスリテラシーの高さに影響を及ぼすことが示唆された。コリア高齢者は在日期間が長く、日本語への会話には問題がないが、識字が低い、高齢であることを理由に健康維持への関心が低い傾向にあり、ヘルスリテラシーの低さに関連していた。ベトナム高齢者は、日本語の理解は乏しく、社会支援も少ない傾向にあった。また健康は個人の意欲だけでなく、宗教や社会地位(医師をトップにするヒエラルキー)によるものと考える傾向にあることが、ヘルスリテラシーに関連したと示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画時における調査対象者は、在日コリアと在日ベトナム20名であった。しかしその後、在日コリアで韓国語を母語として生活する高齢者の多くは、90歳以上のため、コミュニケーションを図ることが難しく、対象者の選定が困難な状況となることが明らかとなった。そこで先行文献などの資料をもとに再検討した結果、中国語を母語として暮らす中国人、中国帰国者の医療アクセスについて、調査がほとんどされていなことが把握された。 これらの状況をふまえ、調査対象者の一部変更が必要となったが、調査対象者のリクルートは、研究協力機関との連携が密に行なわれたこともあり、調査期間内にサンプルサイズに合った人数の個票データを得ることができた。 データ収集後の分析に関しても、計画時のスケジュールに併せて実施できていることから、順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度の目標は、個別アプローチによるヘルスリテラシー向上の効果を明らかにすることである。当初の計画では、日本語の介護予防に関する既存の媒体を翻訳し、個人で学習することによる効果を検証する予定であった。しかし27年度の結果より、在日高齢者の多くは識字が低く、また研究参加者の文化背景が3国で、対象集団の異種性(ヘテロジェニティ)が高く、単一の介入プログラムを提供するだけではヘルスリテラシー向上効果の測定が困難であることが予測された。 文献資料を収集した結果、多文化における健康教育プログラムとして、コンプレックス介入の手法を用いることが提唱されていることが把握された。そこで、本研究においても理論(変化のステージモデル)を用いて、段階別にヘルスリテラシーの変化を検証していく予定である。具体的には、対象者全員に個別介入として、①介護予防チェック(健康測定)を実施、結果をもとに保健指導を実施(識字に拠らない指導)、②保健指導3ヵ月後のヘルスリテラシー、健康行動に関するインタビューを実施し、27年度調査結果との比較を行ない、個別介入の効果を測定する。介入の方法の変更については、27年度中に所属機関の倫理委員会の承認を得ており、また研究協力機関からも了承を得ている。 研究成果の発信については、27年度は学術集会での成果報告のほか、研究協力機関と協働し、研究報告会の実施、ニュースレターへの寄稿を行なったが、より成果を広く発信し、多文化社会における保健医療の課題に関心を持ってもらう工夫が必要と考える。そこで28年度は学術集会での成果報告に加え、学術論文への投稿、一般市民も参加できる定期的な研究報告会の実施も検討している。
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