研究課題/領域番号 |
15K11857
|
研究機関 | 神戸市看護大学 |
研究代表者 |
相原 洋子 神戸市看護大学, 看護学部, 准教授 (90453414)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | マイノリティ高齢者 / ヘルスリテラシー / 地域支援 / 多文化共生 |
研究実績の概要 |
本研究は日本に定住する外国籍出身あるいはその子孫で、65歳以上高齢者のヘルスリテラシー向上にむけた地域支援プログラムを開発することを目的としている。対象フィールドは、定住外国人の高齢化率が16.5%の神戸市とし、27年度は出身国別割合の高い、コリアン、中国、ベトナム出身の40人にベースライン調査を行った。28年度の研究目標は、前年度に研究協力が得られた40人を対象に、個別にヘルスプロモーションに関する健康相談、保健指導を行ない、その結果ヘルスリテラシーにどのような変化があるかを検証することである。 研究協力者40人のうち、1人が調査の途中拒否したため39人に対し、健康測定・健康相談ならびに保健指導の介入を行った。保健指導においては、介護予防の情報媒体をそれぞれの言語に翻訳したものを用いた。 介入後対象者のうち1人が入院のため介入後調査の棄権を申し出たため、38人を対象に介入3ヵ月後の健康状態、健康行動、健康維持の自信についてインタビューを行なった。保健指導では、対象者全員が自己の健康状態に関心を持っており、介護予防に対する意欲を示したが、3ヵ月後の調査では「現在の健康に自信がある」と回答した割合は、対象者の半数であり、中国出身者にその割合が高かった。健康維持に自信がない理由としては、コリアンは「年齢のため」、ベトナム人は「神様に頼るしかない」という発言が多くあり、文化・社会背景の違いによる健康維持への認識の違いがみられた。また高齢者ケアの社会資源・制度については、コリアン、中国人は理解をしていたが、ベトナム人においては理解が低い傾向があった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
追跡調査時に、2人が入院をしたため追跡調査の日程が当初のスケジュールから1ヶ月遅れたため、進捗としては少し遅れていると判断した。 また対象者のうち2人が調査途中棄権となった。当初の計画においては途中脱落者を推測してサンプルサイズを計算していたことから、現時点では分析を行ううえで問題はないと判断できるが、対象者の中には80~90歳代の方も含まれているため入院等における脱落、調査スケジュールの再調整などが今後も起こりうるための対応が必要である。
|
今後の研究の推進方策 |
29年度の研究目標は、集団アプローチによるヘルスリテラシーの向上の効果を明らかにし、また成果発信によりマイノリティ高齢者を包摂した地域支援のあり方について、地域住民の理解を得ることを目標としている。具体的には集団アプローチとして、対象者を国別に分けて、それぞれの国の集団に合わせた言語を用いた健康教育の実施を当初計画していた。しかし28年度の研究成果から単なる情報源のアクセスだけでは、健康行動の変容には効果がないことが把握された。その結果を踏まえ、情報の理解・健康行動変容にむけたプロセスに、社会背景・文化・伝統的価値観がどのような影響を与えているのかの検証する必要があると考えた。そこでフォーカスグループインタビュー、深いインタビューの2つを組み合わせて、新たに健やかな老いに対する考えについてデータ収集し、前年度までに収集したデータを統合し分析していく。 さらに対象フィールドである神戸市では、マイノリティ高齢者対象の施策として「コミュニケーションサポーター」という独自の支援を展開している。一方でコミュニケーションサポーターの活動に関する評価は行なわれていない。今後、マイノリティ高齢者の地域保健のキーパーソンともなり得る彼らの取り組みの実態と課題を検証し、マイノリティを包摂した包括ケアシステムの提言を行っていく予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
調査対象者2名が追跡調査期間中に入院したため、データ収集が1ヶ月遅れた。当初の予定では2月にデータ分析と合わせて個別介入の論文執筆と英文校正の費用を支出する予定であったが、予定より1ヶ月遅れての分析になったため当該年度内に論文執筆が間に合わなかった。当該年度に使用する予定であった上記経費を、翌年度(29年度)5月に繰り越して使用する予定である。 28年度調査で新たに地域支援プログラムを開発するキーパーソンとなるコミュニケーション・サポーターへの調査の必要性が出た。29年度に、コミュニケーション・サポーターを対象とした調査を追加したため、その費用が必要となった。
|
次年度使用額の使用計画 |
28年度2~3月において使用する予定であった、成果報告のための論文英文校正代と投稿料を29年度5月に使用する予定である。 追加調査対象となったコミュニケーション・サポーター6人については、調査の協力同意を3月に得ている。28年度調査で脱落した高齢者2名分のデータ収集・分析にかかる費用(テープ起こし、通訳代)を、コミュニケーション・サポーター6人のデータ収集、調査協力謝礼代に使用する(調査は4月末~5月にかけて実施予定である)。
|