本研究は日本に定住する外国をルーツに持つ人または日本語を日常言語としない65歳以上高齢者のヘルスリテラシーを向上するための地域支援プログラムを開発することを目的とした。対象フィールドは、定住外国人の高齢化率が全国で3番目に高い神戸市とし、市内定住外国人割合の上位であるコリアン、ベトナムおよび中国話者40人を調査対象者とした。平成28年度に対象者の1人の協力拒否があり、平成29年度は39名を対象に調査を行った。平成28年度に調査対象者全員に健康相談および個別保健指導、健康測定を行いヘルスリテラシーの変化ならびに、ヘルスリテラシーと健康状態・日常生活自立度との関連を分析した。平成29年度では調査対象者39人のうち25人に対し、地域ケアに関する集団教育ならびに健康測定を行い、集団教育の受講の有無別におけるヘルスリテラシーならびに健康状態の比較を行った。結果、中国帰国者は集団教育を行った群に地域ケアに関する知識・理解が高くなっていた。また1年目ベースライン時(27年度)に比べ、総体的に要介護度が上がっており、握力低下などフレイル、抑うつ症状のリスクが高くなっていた。一方でこれら健康状態の変化は、集団保健指導の受講有無の群による違いはみられなかった。またヘルスリテラシーについては、介護福祉に精通した通訳の存在が不可欠であるという高齢者が6割おり、地域ケアにおいて高齢者ケアを担う通訳育成および配置の重要性が示唆された。これらの結果を踏まえ、最終年度では市民の多文化共生の理解を得るために、言語的マイノリティ高齢者を包摂した地域ケアに関するシンポジウムを開催した。
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