交替勤務労働者の眠気に関して3つの研究を行った。1)製鉄所で働く男性交代勤務労働者を対象に横断的調査を行い、256名から有効回答を得た。カロリンスカ眠気尺度で測定した夜勤中の眠気レベル、深夜勤期間の睡眠不全と、個人特性、生活習慣、職業性ストレスとの関連を統計学的に分析した。深夜勤前半や後半での高い眠気レベルと関連した要因は、若年であること、睡眠直前のPC等の使用、夜勤後の午後に就寝すること、仕事の達成感の低さであった。夜勤中の眠気は、熟眠不全感と関連があり、夜勤前の睡眠の質と関連していると考えられた。また、夜勤中の眠気と就寝前の生活習慣、職業性ストレス関連要因との関連が明らかになったことから、夜勤前の睡眠の質を改善する対策として睡眠衛生教育や職場での組織的ストレス対策が重要だと考えられた。この成果を原著論文として平成30年度に学術誌へ投稿し、年度内に受理された。2)同じ職場で保健師が、1)の結果を応用して短時間1回の睡眠衛生教育を試行したところ、深夜勤における眠気に改善傾向が見られた。ただし、睡眠行動や眠気の変化には個人差も見られた。保健師によるフォローアップや、セルフモニタリング法の採用による効果の差異は見られなかった。3)看護師の12時間夜勤を模したシミュレーション実験を行った。11名の学生が自宅で、12時間夜勤を想定したデスクワークに従事した。ただし、実験当日は、事前に仮眠をとるように指示した。被験者は2時または4時に60分間の休憩時間を与えられ、それ以外の時間帯では、精神運動ヴィジランス課題(PVT)を課し、反応時間(RT)とエラー率(TE)を計測した。課題の前後にカロリンスカ眠気尺度で評価した自覚的眠気と他覚的なPVT成績には負の相関が見られた。RT値および TE値は2条件で差がみられず、主観的眠気も差はみられなかった。
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