最終年度には、自治体の保健福祉担当部署が目指す職場環境改善活動を抽出する目的で、それまでに得たデータに基づく意見交換を実施して、内容の精錬に努めた。その結果、保健師は、農業従事者本人の健康と家庭生活を維持できるようにサポートする視点を重視しているが、部署内の他職種を中心に基幹産業の維持・発展を強く意識しており、連携により職場環境改善が行われていると解釈した。 研究全体を通じては、第一に、北海道道東地域の自治体が農業従事者に行っている事業のうち、職場環境改善活動の一部に該当する活動を抽出するため、文献検討を実施した。農業従事者対象と限定した活動はなかったが、対象者に農業従事者が多い事業として、特定健康診査・特定保健指導があげられた。第二に、北海道道東地域の市町村保健師がとらえる農業従事者のサポートに該当する日常業務を抽出するため、インタビュー調査を実施した。【特定健康診査・特定保健指導で農業従事者と直接かかわる機会を大切にする】があり、保健師も健康診断の受診勧奨や事後指導を重視した農業従事者の支援を実施しているととらえていることがわかった。第三に、当事者である農業従事者が自覚している職場環境を抽出するため、北海道道東にある地域でたまねぎ農家のインタビュー調査を行った。【機械化や自然の影響を受け、年間を通じて作業内容が変化する仕事】ととらえていたが、年齢とともに自身の健康管理のための行動をとる様子が確認できた。市町村保健師が通常業務の中で行う活動は、職場環境改善の一部であるため、第四段階として、保健師の所属する保健福祉部署の担当者にインタビュー調査を行った。保健師の健康と家庭生活を維持するためのサポートという視点に加え、他職種を中心に、基幹産業の維持・発展が【将来の町づくり】につながるという意識があり、多職種の連携により農業従事者の職場環境改善が実施されていると解釈した。
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