研究課題/領域番号 |
15K11865
|
研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
伊藤 隆子 順天堂大学, 医療看護学部, 教授 (10451741)
|
研究分担者 |
雨宮 有子 千葉県立保健医療大学, 健康科学部, 准教授 (30279624)
辻村 真由子 千葉大学, 看護学研究科, 准教授 (30514252)
石垣 和子 石川県立看護大学, 看護学部, 教授 (80073089)
吉田 千文 聖路加国際大学, 看護学部, 教授 (80258988)
亀井 縁 日本赤十字看護大学, 看護学部, 講師 (90624487)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 倫理的ビリーフ / モラルディストレス / ケアマネジメント |
研究実績の概要 |
平成27年度の計画は、日本の在宅療養の場において、ケアマネジメントを実践する専門職の経験するモラルディストレス(MD)には、どのような倫理的ビリーフが存在するのかあるいは影響しているのかを明確にすることであった。そのために先行研究(平成24-26年度科研)にて実施したケアマネジャー(CM)支援プログラムで検討された事例を、(1)事例を前にして自然にわきおこる感情認知・信念や価値観(倫理的ビリーフ)、(2)専門職としての倫理的/道徳的判断、(3)行動抑制を引き起こす外的要因と内的要因、(4)それによって発生する苦痛な気持ちと心理的負担感、に沿って再分析した。分析対象は、支援プログラムに参加したCM26名中、グループワーク(GW)で検討した24事例である。CMの基礎資格は、介護福祉士11名、看護師4名、社会福祉士3名、他6名、CM経験年数:1~12年、であった。分析の結果、CMは「利用者の安全と幸せを願う」「家族との良好な関係を築く」「CMとしての役割を果たす」ために、「利用者の危険を回避し介護者の負担を減らすサービスの導入」「CMとしての契約や法の遵守」をすべきと判断するが、「利用者/家族の意思や価値観に阻まれ援助関係が形成できない」「医療的知識の不足に阻まれ医療職との連携や協働に至らない」「上司の意見、職場の裁量範囲や服務規定に制約を受ける」「どこまでがCMの仕事なのかわからない」などが妨げとなり、「もどかしさ」「失望感」「悔しさ」「重圧感」「後悔」「申し訳ない」などのMDを経験していた。CMの経験するMDにはCM自身の個人的な価値観や信念と、専門的教育の素地が加わり多様な様相を呈していたことが明らかとなった。今後CM自身が、MDの経験を自ら客観視できるような質問紙を作成する予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の計画は、日本の在宅療養の場において、ケアマネジメントを実践する専門職(CMや訪問看護師等)の経験するMDには、どのような倫理的ビリーフが影響するのか明確にすることであった。そのため、平成27年6月、10月、平成28年2月の3回研究者が集合し研究会を開催し協議をした。その結果、新たにインタビューを実施するのではなく、すでに収集されたケアマネジャー支援プログラムにて検討された事例を再分析し、その中に含まれる倫理的ビリーフを解明することになった。その結果はEAFONSにて発表したが、倫理的ビリーフ等概念について、さらに検討が必要なことが合意された。
|
今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、MDに影響する倫理的ビリーフを自己覚知できる質問紙を作成するために、国内外の在宅療養の場におけるMDや倫理的ビリーフに関連する文献レビューを行い、MDや倫理的ビリーフに関する聞き取り調査とその分析結果をもとに質問紙を作成し、作成した質問紙を使用した全国調査を実施し妥当性を検討する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本年度は新たにインタビューを実施するのではなく、すでに収集されたケアマネジャー支援プログラムにて検討された事例を再分析し、その中に含まれる倫理的ビリーフを解明することになった。そのため、交通費に余剰が出た。
|
次年度使用額の使用計画 |
平成28年度は、モラルディストレス(MD)に影響する倫理的ビリーフを自己覚知できる質問紙を作成するために、国内外の在宅療養の場におけるMDや倫理的ビリーフに関連する文献レビューを行い、MDや倫理的ビリーフに関する聞き取り調査とその分析結果をもとに質問紙を作成し、作成した質問紙を使用しエキスパートにプレテストを実施する。その交通費に使用する予定である。
|