本研究は、現代の“死別を支え合うコミュニティ”の創造に向けて、都市における“死別を支え合うコミュニティ”はどのようなものか調査し、その結果をもとに“死別を支え合うコミュニティ”を育むプログラムを開発することを目的とした。 2016年には、「都市部における死別を支え合う地域コミュニティ」について、地域活動に携わり、近隣の死別の相談を受け、見守ったことのある住民、もしくは、公の施設等に勤務している職員、計13名にインタビューを行った。その結果から、地域コミュニティにおいて、長年の顔見知りの関係性が信頼関係に発展することで、近隣の死別を見守るという交流が生じることが考えられた。 2017年には、「地域包括支援センターにおける死別サポートの現状と課題」について全国質問紙調査を実施した(有効回答数740)。地域包括支援センターにおいて市民から死別に関する相談を受けたことがあるかという問いに対して、「ある」が473(63.9%)と6割以上であった。その結果から、地域包括支援センターは、市民に身近な専門職、行政窓口として、終末期の患者・家族、遺族の見守りを担う可能性が示唆された。 2019年には、先行研究結果に基づいて、地域住民を対象とした都市における“死別を支え合うコミュニティ”を育む教育プログラムの試行・評価を行った。研究デザインは、自己対照デザインによる介入研究であった。プログラム内容は、講義、グループワークであった。研究参加者は38名(女性30名,男性8名,平均年齢71.8歳)であった。グループインタビューの結果、「死別を支えるコミュニティは身近なつながりから生じる」等の意見があった。研究参加者は、自分の地域活動や死別の経験に意味を見出していた。今後、地域において、“死別を支え合うコミュニティ”や地域の見守りについて、住民相互に話し合う機会を設けていくことが必要である。
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