1.最終年度の研究成果 これまで実施してきたインタビュー調査、質問紙調査等によって、地域保健との連携に必要な産業看護職のコンピテンシーを明確にし、「産業看護職のための地域保健との連携マニュアル」を作成した。また、地域保健との連携を実践できる産業看護職を育成することを目的に、そのマニュアルを活用し、1事業場および、1保健福祉事務所管内において産業看護職を対象とした研修会を開催した。マニュアルや研修会の効果については今後、分析、検証する予定である。 2.研究期間全体の研究成果 日本産業衛生学会登録産業看護職2574名を対象とした質問紙調査の実施:回収数は815名(回収率31.7%)、有効回答数806名(有効回答率98.9%)。地域保健との連携の必要性を感じているにも関わらず、実際には6割以上の産業看護職が連携を行えていない現状が明らかになった。連携経験を持つ産業看護職は日頃から家族の問題についても相談できる関係を従業員とつくり、地域保健に関する情報を収集していた。また、従業員が主体的に地域保健の担当者へ相談出来るよう働きかけていることも伺えた。しかし、組織の理解を得るための取り組みについては経験の割合が低く、そのコンピテンシーが確立されていない可能性が考えられた。そして、連携の基盤となる意識・姿勢・考え方としては、8割以上の者が事業所外を含め多職種と連携する姿勢を持っており、連携の際はコーディネーターの役割を担う意識が備わっていた。 産業看護職を対象とした地域保健との連携に関する教育プログラム・ツールの開発:質問紙調査やインタビュー調査の結果に基づいて、連携に必要なコンピテンシーを身につけるための教育プログラム(約2時間)を作成した。また、上記の通り、産業看護職向けのマニュアルも作成した。これまでにないツールのため、研修会の参加者からは好評を得ている。
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